石川県輪島市に校舎を構える日本航空高等学校石川。
2月に行われた北信越高校新人ラグビー大会で優勝し、第25回全国高等学校選抜ラグビーフットボール大会への出場を果たした。
1回戦の相手は、関西の雄・京都成章だった。
粉雪が降ったりやんだりの不安定な天候の中、次第に体力も奪われる。
前後半合わせ、4つのトライを許した。
20点差がついた時、日本航空石川の選手の口から、ある一つの言葉が発せられた。
「点数関係ない。戦おうよ!」
これは公式戦。もっと言えば、全国大会。
勝ち負けを競う60分間の真っ只中。
CTB上野魁心キャプテンは言う。
「僕たちは今までずっと、(学校がある)輪島や(能登半島地震で)被災された方々に笑顔や勇気を届けよう、と言ってきました。だから点差は関係なく、最後まで戦う姿を見せたいという思いで全員がいました。」
1月1日に発生した能登半島地震により、日常が日常でなくなった。まだ、輪島に戻る目途は立っていない。
だからこそ1人のラグビープレイヤーとして、今この瞬間にグラウンドに立つ意味を自分たち自身に問うたのだ。
この日、日本航空石川のベンチ裏には、大きなフラッグが飾られていた。
スローガンである『AS ONE』とともに『輪島とひとつ』の一文が。そしてその周りには、選手たち1人ひとりの想いをしたためる。
『今日より明日 明日より明後日 素晴らしい日がやってきます。』
そう綴ったのは、富山県出身のスタンドオフ・石﨑遥梅選手。震災で苦しんでいる人たちに、届けたい想いを込めた。
「復興に向け1日1日を過ごしていったら、また素晴らしい街になると思って。」
やってきますように、ではない。
「輪島は素晴らしい街」と身をもって実感しているからこそ『素晴らしい日がやってきます』と結んだ。
前半31分に掴んだ1トライ。
1番・川上聖翔選手が力強く伸ばした右手は、希望のワントライとなった。
会場にいる全員が、大きな笑顔を見せた。
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