4月28日から5月5日まで行われた、サニックスワールドラグビーユース交流大会2024。
東福岡は、全体6位で大会を終えた。
東福岡高校ラグビー部に根付く、一つの文化がある。
『強い男は優しい』
昨年のサニックスワールドラグビーユース交流大会で初優勝にあと一歩と迫ったチームも、6年ぶりの花園優勝を果たした一昨年のチームも。
ただラグビーが強いだけではないのが、フェニックス。ラグビープレイヤーとしての優しさを、それぞれに有していた。
そして今、東福岡高校ラグビー部の選手たちは、かつて自身が憧れた『強くて格好良い』東福岡の姿を次世代に受け継ぐべく、グラウンド内外で『優しい思いやり』を体現する。
サニックスワールドラグビーユース交流大会4日目、東海大相模戦でのこと。
試合前のウォーミングアップ中、No.8古田学央キャプテンは記者に声を掛けた。
「1年生が先頭を歩いて入場します。写真を撮ってあげてください」
東福岡では、1年生が初めてグリーン(東福岡のファーストジャージーのこと)を着て先発する場合、先頭で入場することが習わし。
この日は、サニックスワールドユース中にスターティングフィフティーンを勝ち取ったルーキーズ・LO平野良次選手にSO川添丈選手が、先頭に立った。
記念すべき、東福岡での一歩目を記録に残してあげたい。
先輩たちからヒガシを継承し、後輩たちへと受け継ぐ『兄』としての優しさが、その言葉から溢れた。
藤田雄一郎監督も、試合会場で子どもを見つければ自ら声を掛け、握手を交わし小さなお土産を手渡した。
「東福岡を応援してね」と言われた子どもは、少し恥ずかしそうに、だけど嬉しそうに笑顔をのぞかせる。
自チームの選手か否かは関係ない。
ラグビーを好きなこどもたちに、分け隔てなく愛情を注ぐ。
そんな監督の姿を日頃から見ているからだろう。
選手たちは、試合を見に来ていた見知らぬ小学生の男の子たちにも、自然と手を伸ばした。
頭を撫でお礼を伝えると、名前を聞き、最後に「ヒガシにおいでね」と加える。
知り合いだったわけではない。でも「応援してくれていたから」。
当たり前のように、感謝の気持ちを表した。
「未来のフェニックスジュニアを悲しませないようにプレーしないと」と、自らの襟を正す。
サニックスワールドユースは、地元・福岡で開催される高校生の世界大会。
東福岡は『Our Local HERO』と紹介された。
地元の、ヒーロー。
小さな子どもたちに、しかとその言葉は刻まれた。
今年の東福岡は、苦しいシーズンを歩んでいる。
全国選抜大会で1回戦敗退。
サニックスワールドユースでは、良いゲームができた次の試合ではミスが頻発する、ジェットコースターのような毎日を過ごした。
「3歩進んで、4歩下がってしまった。とにかくFWであれだけやられれば、ラグビーの原則として勝てるわけないし、得点も取れるわけがない。フィジカル負けです。そこをもう一回鍛えたい」
大会最終日、御所実業との5位決定戦に7-33で敗れると、藤田監督は言葉少なに会場を後にした。
古田キャプテンも「ミスが続くと、勝てる試合も勝てなくなる」と表情を引き締める。
順風満帆な日々には、まだまだ遠い。
SO川添選手は試合終了後、膝をつき涙を流した
今年チームが掲げるスローガンは『咲』。
ようやく蕾をつけだしたかと思えば、その蕾もどこかにふと、隠れてしまうような試合もある。
「ぜんぜん、咲いてもなんでもない」と現在の状況を表す古田キャプテン。
だが、苦しい日々を耐え抜けるよう、強い根が張り出したことは間違いない。
全ては、1月7日に大輪の花を咲かせるため。
どんな逆風にも耐えうる太い幹と、多くの栄養を吸収するための無数の根を、蓄える毎日だ。
良い試合はできるようになった。だが「まだ一定の強さはない」ことも自覚した。
良い準備ができなければ、良い試合はできない。ひいては、良いミーティングなしに勝利はない。
そのことを身をもって実感した、シーズン前半戦。
明日、6月18日(火)はいよいよ、前半戦最後の大一番。
第77回 全九州高等学校ラグビーフットボール競技大会、大分東明との1位ブロック決勝戦をむかえる。
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