「国スポには自分がスタメンで戻ってくる」最終選考で漏れた仲間から託されたSAGA2024の切符。東京都がラスト1枠を掴む|第78回国民スポーツ大会関東ブロック大会<ラグビー少年男子>

10月に佐賀県で行われる第78回国民スポーツ大会への出場権をかけ、ラグビーフットボール競技の関東ブロック大会が山梨県で開催された。

8月25日(日)には少年男子の決勝戦が行われ、東京都がSAGA2024への出場を決めた。

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栃木県 12-26 東京都

栃木県:緑ジャージー、東京都:紫ジャージー

2年続けての決勝カードとなった一戦は、東京都がリベンジを果たした。

先にスコアを動かしたのは栃木県。

試合序盤は東京都の勢いに押され、ゴール前ディフェンスが続いたが、相手の攻撃を凌ぎ切るとチャンスを得たのは前半13分。

ラインアウトからモールを組み、2番・齋藤丈太郎選手(國學院栃木)が押し込んだ。

栃木県が5点を先制した。

対する東京都は、しかしすぐさまトライを取り返す。

前半14分に9番・渡邉幹太選手(目黒学院)がゴール中央にトライ。

前半ロスタイムにもFW戦から4番・フィッシャー慶音選手(目黒学院)が取り切れば、5-14。

前半を東京都の9点リードで折り返した。

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後半も東京都の流れは続く。

後半2分、No.8齊藤源輝キャプテン(東京)がトライを決め5-19と2トライ2ゴール差に引き離すと、栃木県の十八番であるディフェンスで真っ向勝負に出た東京都。

コンバインドチームだからこそアタックでエラーをしないために、と何度もキックを蹴り込み、ディフェンスで前に出続けた。

「ディフェンスの練習ばかりしていました」と笑ったのは、SO齋藤航選手(國學院久我山)。

全員がタックルで何度も相手の出足を止めた。

またスクラムでは、後半勝負の時間帯に相手ボールスクラムでコラプシングを誘い、喜びを爆発させた東京都。

3番・岩﨑壮志選手(早稲田実業)は言う。

「相手1番の首を弾き出して、そのまま真っ直ぐ押しました。そうすると(相手は)浮いてくるので、コラプシングを取ってもらえました」と。

FWを強みとする栃木県のスクラムは、自分たちの強みでもある。

だからこそ真っ向から勝負を仕掛け、勝ち切ったことが嬉しかった。

キツい時間帯には、選手たちで『バッキータイム!』と声を掛け合ったというオール東京。

宿泊したホテルにあったアイスクリーム『チョコバッキー』をご褒美に、と自分たちで自分たちのモチベーションを上げるクレバーさも見せた。

後半19分には、ディフェンスを搔い潜って東京都が4トライ目。

ゴール前でもフェーズを重ねすぎることなく、トライを取り切った。

試合終了間際には、栃木県が6番・下境洋選手(國學院栃木)のラインブレイクから最後は12番・家登正宜選手(國學院栃木)が押し込み、一矢報いた栃木県。

10番・金子新選手(國學院栃木)のコンバージョンゴールも成功し7点を返したが、しかしそこまで。

12-26で東京都がSAGA2024への出場を決めた。

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東京都

「厳しい局面をなんとか一つずつ、彼らが乗り越えた」と笑顔を見せたのは、戸田竜司監督(東京高校)。

山梨県で行われた、この関東ブロック。

武田信玄から着想を得た『戦(いくさ)』をスローガンに掲げ、また前日には全員で武田神社へ必勝祈願にも訪れた。

「どういう戦を戦い抜くか。『戦を体現しろ』と送り出しました。彼らがそれを体現してくれたことが一番です」

栃木県の強みは何なのか。

そして、自分たちの強みは何であるか。

戸田監督は、選手たちに問うた。

「栃木さんの強みは自分たちの強みでもあった、と昨日のミーティングで理解しました。だったらその強み同士、どちらが強いか戦おうじゃないか、と。選手たちは絶対に逃げずにやってくれた」と讃えた。

「彼らが自分たちでゲームを作ってくれたことが本当に嬉しいです」

オール東京が山梨県入りしたのは、他県よりも早い18日夕刻。

最初の3日間は、全体の登録選手50名のうち30名ほどが集まった。

そこでセレクションを兼ねた合宿を行い、公式宿舎に入る前夜に23名の登録選手を発表。

惜しくも漏れた7名は、そのまま東京へと帰った。

早稲田学院のFL小林商太郎選手は、その時のことを振り返る。

「落ちた子たちから、一言ずつ言葉をもらいました。井手晴太くん(成城学園)という、高校日本代表候補のセンターも落ちてしまったんです。すごいプレイヤーで、一緒にプレーしたかったんですけど。彼が最後に『佐賀での国スポには自分がスタメンで戻ってくる』と言葉を残してくれました。彼の分まで体を張り続けないと、って触発されて、みんなが一つにまとまれたと思います」

言葉どおり、小林選手は何度も体を当て、何度もハードタックルでチームに貢献した。


「井手ー!」と叫びながら井手選手の決めポーズを真似て全員で喜びの写真撮影

チームを率いるNo.8齊藤源輝キャプテン(東京)もまた、幾度も体を張った。

試合前には「このために1週間合宿をしてきた。このためにやってきたんだぞ」と仲間に声を掛け、ピッチに立つ。ノーサイドの笛が鳴ると「良い試合ができて、良い戦ができた。素直に嬉しいです」と安堵の表情を見せた。

だが、東京都として日本一を目標に掲げている以上、本番はこれから。

「プレーだけでなく生活面でも日本一の振る舞いを」と引き締め、SAGA2024へと歩みを進めた。

選手たちからの胴上げに、両手を広げ応えた戸田監督。

宙を舞った後、選手たちに語り掛けた言葉を紹介したい。

「山梨の地で準備をさせてもらったことに感謝をしなければいけない。各学校の先生たちが送り出してくれたこと、(メンバー入りしなかった)27名の分も背負って戦ったこと。いろんな人への感謝の気持ちを、オール東京としての立ち振る舞いを持って次に進みましょう。ナイス戦(いくさ)でした!」

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燃えていた。本当に楽しかった

この日2トライを決めたのはLOフィッシャー慶音選手(目黒学院3年)。

アタック力に定評のある選手だが、この夏、自チームではBチームでの時間を過ごした。

だからこそ飛躍のきっかけを掴めれば、とオール東京での活動に「燃えていた」というフィッシャー選手。

「オール東京は自分が引っ張る、と思っていました。自分がやらないと、って」

自身が決めた2トライは、その2つともがゴール前でのFW戦から。

相手ディフェンスを巧みにかわしトライに結び付ける体の強さとしなやかさ、そして判断力はオール東京にとって大きな武器となった。

「最高です。めちゃくちゃ気持ち良いです。最終合宿で落ちてしまった選手たちにも『ちゃんと佐賀行きを決めたぞ』と伝えたい」と笑顔を見せた。


左がFL小林商太郎選手(早大学院)、右がLOフィッシャー慶音選手(目黒学院)

国スポに連れて行ってくれ。一緒に佐賀でプレーしたい。

涙を零しながら気持ちを託してくれた、この場に立てなかった選手たちがいた。

「オール東京での合宿が、本当に楽しかった。めちゃくちゃ楽しかったです。この結果を(最終選考で漏れた選手たちに)早く報告したいと思います」

目黒学院、早大学院、早稲田実業に東京。明治学院東村山に成城学園、國學院久我山、そして東京朝鮮と本郷。

全9校から成る2024年夏のオール東京は、SAGA2024国スポ前にも再び山梨県で合宿を行う予定だ。

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