朝霞
昨年の花園予選開会式でのこと。
出場校を一校ずつ紹介する現地アナウンサーから「古豪・朝霞」との紹介を受けた。
僕たちは、かつて花園に出場したこともある歴史あるラグビー部の一員。
だから。
50年以上遠ざかっている花園の舞台に、近付くきっかけを掴みたい。
『古豪復活』をスローガンに掲げ、1年間を歩んだ。
「ベスト8に入って、熊谷ラグビー場のAグラウンドで試合することを目指していました。でも力及ばず、熊谷高校さんに負けてしまった。悔しさはありますが、3年間の集大成をこの試合で出せたと思います。悔いはないです」
後半、1トライをもぎ取った喜びを忘れない。
「一矢報いることができたんじゃないかな」と村上奏音キャプテンは笑顔を見せた。
勧誘も頑張った。
マネージャー含め12名の3年生が抜けても、単独チームで新人戦を戦うことができる。
「とにかく話し掛けに行って、ラグビーの楽しさを伝えました」と笑った3年生たち。
かくいう3年生だって、誰かが誰かに誘われて高校からラグビーを始めた『オール初心者』だった。
4年ぶりに突破した1回戦。
間違いなく『古豪復活』の狼煙を上げた。
「この『古豪復活』というスローガンは、来年にも引き継いでもらいたいです(村上キャプテン)」
涙交じりの輝く笑顔で、後輩にバトンを託した。
熊谷
試合を終えると、横田典之監督は選手を集め、話し出した。
「これが公式戦」
意図を問うた。
後半、朝霞高校が「本当にこの30分で終わるんだ」という全てを、プレーの一つ一つに出してきたこと。
その結果、1トライを奪われたこと。
対戦相手から発せられた熱量を『これが公式戦』の一言に込めた。
「朝霞高校さんの『これが最後だ』という気持ちが、『これで3年間が終わってしまう』という気持ちが、プラスに働いていたと思うんです。それが高校生の良さ。そういう所を(熊谷高校の)生徒たちは実感したんじゃないかなと思います」
榊原洋太郎キャプテンも「後半は朝霞高校さんの勢いがどんどんノッてきて、自分たちは受け身に回ってしまった」と振り返った。
スコア上、試合は決まっていた。
それでもプレーは決して、最後まで諦めなかった朝霞高校。
これが公式戦。これが、花園予選。
熊谷高校の選手たちに、戦いのスイッチが入った。
「ディフェンスの出足の速さ、そしてブレイクダウンでの寄りの速さを1週間で磨きます(榊原キャプテン)」
3回戦は、草加高校と対戦する。