9月8日に開幕した、令和6年度 第104回全国高等学校ラグビーフットボール大会埼玉県予選。
11月2日には準々決勝が熊谷ラグビー場Aグラウンドで行われ、ベスト4が出揃った。
なお準決勝は11月9日(土)、熊谷ラグビー場Aグラウンドでキックオフを迎える。
昌平(A1)53-0 本庄第一
昌平
熊谷ラグビー場Aグラウンドに場所を移した、準々決勝。
天候は雨。相手は本庄第一。
きっと、なにか策を立ててくるだろう。
事前の予測から、ハイパントに対応する陣形を組んでいた昌平。
それでも22m内で蹴り込まれたキックには、驚きを隠さない。前半中盤には、自陣深い位置でのディフェンス時間が続いた。
それでも接点やブレイクダウンで後手に回ることなく、たくましく勝負を仕掛ければ守り切る。
こぼれ球への反応も随一だった。
スクラムにラインアウト、セットプレーではいくつか噛み合わないシーンはあった。
それでも横の連携は抜群で、ボールを持てばあっという間にゴール前へとたどり着く。
兼ねてより信条とする防御力に加え、攻撃力が大きく向上したことを示した一戦となった。
4トライを決めた10番・宮本和弥選手は、今年の初夏まではフルバック。
だがスタンドオフの位置につくことが増えた夏合宿以降は10番が続き、この花園予選でも背番号10番を背負う。
この日もアンストラクチャー時には後ろへ下がったが、セットプレーからの攻撃ではスタンドオフの立ち位置に入った。
背番号関係なくポジション配置につく昌平。
現在のフォーメーションにも「だんだん慣れてきた」と話す。
細身の体ながら体幹は鍛えられ、攻守の肝となる宮本選手。
圧巻のディフェンス力に加え、ボールを持った時のランコースには会場から驚きの声が上がる程だ。
現在の課題は、キャッチからパスのスピードを的確にすること。そしてパスの精度を上げること。
まだまだ伸びしろだらけの2年生。
「目標は大会通じての無失点」と、残る120分も鉄壁の防御を敷く姿勢を示した。
本庄第一
蹴って、チェイスして、タックルして。
一瞬のチャンスを狙い続けたのは本庄第一。
敵陣深くであっても、とにかくハイパントを蹴り込んだ。
前半中盤。
敵陣でのマイボールスクラムから15番・岩﨑瑛汰選手がショートパントを、続いて10番・坂本智駿キャプテンがゴールライン間際に迫る裏へのボールを蹴り込むと、この日最大のチャンスは訪れた。
しかし仕留め切れず。ゴールラインが遠い。
フリーキックでも15番・岩﨑選手のタップキックからすぐにパントを蹴り上げるなど、意表を突いたプレーでトライを狙ったが、昌平のディフェンスは固かった。
試合中何度も声を張り上げ、誰よりも笑顔でプレーしたのはSO坂本智駿キャプテン。
グラウンドを去るときにも涙を見せず、笑顔で拳を突き上げた。
「昨年もベスト8。今年は昌平が強いと分かった上で、自分たちは戦いにいきました。悲しい状態で終わりたくなかった。この1年、共同キャプテンとしてチームを引っ張ってきたからこそ、自分だけは笑顔で終わりたかった」
出し切った。
悔いもない。
これまでだったらトライを取れていたシチュエーションはいくつもあったが、そこで届かなかったのは「自分たちと昌平との強さの差」だと、気丈に受け入れた。
3人の共同キャプテンを筆頭に、チャレンジを重ねた1年間。
この日、ゲームキャプテンを務めたのはNo.8杉田脩選手。
試合後、応援席への挨拶を終えると、去り際に涙が溢れた。
「昨年、先輩たちとベスト4をかけてこのグラウンドで戦いました。今年こそは勝って、さらに良い景色を保護者の方やサポートして頂いている方たちに見せたかった」
受け止めたのは、もう1人のキャプテン・HO澤田晃希選手だった。
これで2年続けてのベスト8となった本庄第一。
この壁を、後輩たちには超えてもらいたい。
「本庄第一として新井先生がやりたいラグビーは、去年のようなボールを動かし続ける展開ラグビー。今年、僕たちにはそのスキルがなかった。だから後輩たちには、スキルを磨いて、自分たちの強みを一つでも作っていって欲しいです」(坂本キャプテン)
「埼玉で一番の練習をすれば、新井先生と菊池コーチについていけば、絶対にベスト8を乗り越えて花園に行けるチームだと思う。1日1日の練習を大切にして欲しい」(杉田キャプテン)
チャレンジャーだった3年間。
笑顔と涙で、グラウンドを去った。