「ヒガシはヒガシだった」東福岡、筑紫を80-5で下し25年連続福岡県優勝|第104回全国高等学校ラグビーフットボール大会福岡県予選大会 決勝戦

貫いた『HUNGRY』。1トライで示した筑紫魂

ノーサイドの時も、表彰式の時も。

試合後、3年生たちだけで記念の1枚に収まるときも。

涙を零さず、引き締まった表情を貫いたのはSH納冨暉生キャプテン。

戦いを終え、思い浮かんだ言葉は、今年のスローガン『HUNGRY』だった。

「ハングリーに戦い切ったこと、最後まで貫き通して後悔ないラグビーができたことが、今一番、頭に残っています」

今年のスローガンには、サブタイトルがある。

『HUNGRY ~本能に従え 魂で抗え~』

筑紫魂と称される熱き魂で、いかなる困難にも抗うこと。

そのためにも本能に従ったタックルが、筑紫の一丁目一番地であること。

1年間、選手たちが心の支えにした言葉が、試合後にも脳裏をよぎる。

最も『HUNGRY』を体現できたのは、後半19分のトライシーン。

「しつこいディフェンスから敵陣に入って、相手のミスを誘って。ラインアウトでビッグゲインをして、一度はボールを取られてはしまったんですけど、その後のキックチャージからのトライは、ハングリーに戦う姿勢を示せたと思います。粘り強いディフェンスがトライに繋った、ハングリーを最も体現できたシーンでした」

試合前、納冨キャプテンが仲間に伝えたのはシンプルな3文字だった。

「勝つよ」

勝ちたい、という気持ちではない。

勝ちたい、ではなく、勝つ。

「勝つ自信がありました。ヒガシに勝つ、を1年間ずっとブラさずに、練習中から言い続けてきたので。最後は『勝つ』と常に言っていました」

それでも、四半世紀に渡って福岡の王者で在り続ける東福岡は、やはり強かった。

「自分たちが想定していた以上に、東福岡が別のチームになっていて。ブレイクダウンや接点が、春の大会とは違いました。でもそれは、分かっていたことです。東福岡ならこの大会に向け仕上げてくる、と分かっていたので、自分たちもさらに高みを目指して練習してきました。でも想定していた以上に、接点とブレイクダウンで圧力を掛けられた。びっくりした、というよりも『あ、やっぱりヒガシだな』と感じました」

筑紫で過ごした3年間は、ラグビーの原点を学んだ3年間でもあった。

「筑紫は、魂のラグビー。タックルが筑紫の原点です。ラグビーで一番大切な部分を、たくさん学びたくさん経験できた3年間でした」

そして、下級生たちに悲願を託す。

「僕たち3年生は、1・2年生のリーダーシップに助けられました。その良さをこれから更に伸ばして欲しいですし、今年こういう経験したことを次の1年に生かして欲しい。ヒガシに勝って、花園に行く。来年は記念大会かもしれませんが、ヒガシに勝って花園に行く、というところはブラさずに筑紫の原点に返って、ぜひヒガシに勝って花園に行って欲しいです」

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ノーサイド後、少し時間が経った長木裕監督の目は、幾ばくか潤みを帯びていた。

「東福岡はフィジカルが春と全然違いましたね、強かった」

そして、続ける。

「幹の部分で負けたな、と。枝葉にはいろいろと戦術、戦略を準備して、生徒たちもよくタックルしてよく走ったのですが、幹の部分の差をすごく感じました。東福岡は春から体つきも大きく変わって、秋に向け強化してきたことがすごく表れていました。悔しいけど、『ヒガシはヒガシだな』という所を感じました」

決戦に向け、保護者が手作りした応援旗は500枚にのぼった。

今年は創部50種年。揃いのユニフォームも作成し、決勝戦に挑む選手たちを全力で後押しした。

「今年の3年生たちは、幸せだと思います。例年以上にたくさんOBが集まってきてくれて、いろんな人が顔を出してきてくれました。静岡ブルーレヴズの日野剛選手や、レッドハリケーンズ大阪でリクルーターを務める秦一平氏も来てくれて。色んな人の話を聞いて、色んな指導を受けているから、幸せだったと思います」

たくさんの支えに、感謝した。

敗戦から一夜明け、筑紫は来季の新主将を発表した。

SO草場壮史選手。

兼ねてより長木監督が将来を有望視する逸材が、グラウンド内外でタクトを握ることになった。

決勝戦後、目を真っ赤に腫らしていた草場選手に、長木監督は声を掛ける。

「忘れるなよ、今日のこと」

草場選手は言った。

「3年生が泣いている姿も、このスコアも。本当に勝つ気でやってきたんですけど、それでもこれだけ足りないということを忘れません。これからギアを上げていかないと、と思っています」

足りなかった所は、いっぱいある。

相手のスタンドオフは、1年生。

1学年下ながら「シンプルにスキルが負けていた。司令塔として自分がゲームを作ってチームを勝利に導くポジションなのですが、そこで全然、スキルが足りていなかったです」と悔しさを口にする。

引き離された75点の差も、重くのしかかる。

「60分間、走り続けようという目標でゲームに入りました。でも走っても走っても、当たる部分で負けて、ズルズルといかれてしまって。キツい練習もめちゃめちゃやってきたんですけど、体で、フィジカルの部分でヒガシに敵わなかったです」

これまで以上の、もしくはこれまでとは違う種類のキツい練習を、これからの1年間に行わなければ勝てぬということを実感した。

「3年生たちには体の大きな先輩たちがたくさんいました。でも1・2年生は、体が小さい。今の3年生よりも大きくなって強くならないといけない、という覚悟はできています」

たくましい言葉が並んだ。

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創部から半世紀が過ぎた。

ここからは、次の50年に向けて、新たな旅路が始まる。

だからまた、一からのスタート。

フィジカルを鍛える所から歩み出す、51年目のキックオフ。

草場・新キャプテンは言った。

「100周年に向けた、新しい1年目。歴史変えるには、ちょうどいいかな」

これまでの50年に敬意を払い、新たな50年への歩みを進めた。

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