11月17日に行われた、第104回全国高等学校ラグビーフットボール大会 神奈川県予選会決勝。
桐蔭学園高校は東海大相模高校に34-18で競り勝ち、2年連続22回目の優勝を果たした。
これで同大会2連覇を達成した、桐蔭学園。
その裏にあった、数々のエピソードを追った。
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後半22分。
立て続けに2本のトライを許し、6点差まで迫られた時のこと。
真っ先にインゴールで声をあげ、仲間を呼び寄せたのはNo.8新里堅志選手だった。
「どんな状態も自分たちの想定内。それでもチームが崩れそうになった時に、チームが離れないこと。チームを一つにして、次の自分たちのプレーの軸を確認することを意識していました」
トライを取られた時にバラバラで話す癖があった、と気が付いたのは夏合宿中。
以降は、被トライ時にまずはチームが集まり、チームとして何をするのか、だけを話すことに注力した。
「それが昨年の花園を経験させてもらっている数少ないメンバーとしての、自分の役割です」
その後、桐蔭学園は敵陣で得たペナルティで、ペナルティゴールを選択。
10番・丹羽雄丸選手が落ち着いて沈めれば、後半28分に9点差をつけた。
1トライ1ゴールで逆転される可能性のある6点差から、1つのプレーでは逆転不可能な9点差に。
7番・申驥世キャプテンは言う。
2年前、東海大相模に1点差で敗れたあの日。PGを狙えるタイミングでも、PGを選択せずトライを狙ったことで結果的に敗戦した。
「2年前は、負ける時の想定にリアリティがなかった。『どうせ勝てるだろう』じゃないですけど、本当にキツくなった時の想定をしていなかったんです。でも今回はそこも詰めてきたので。何も考えることなく、ショットを選択できました」
最後は、SO丹羽選手が相手のこぼれ球を拾い上げ、締めくくりのトライ。
34-18。
最終的に16点差をつけ、勝利を手にした。
決して簡単なゲームではなかった。
互いに激しく体をぶつけ合い、コンタクト強度の高い60分間。
戦いを終えた申キャプテンは呟く。
「あー、やっぱり相模だな。決勝はこういう試合になるんだな、と思いました」
それでも戦い抜く自信が、桐蔭学園にはあった。
「本当にずっと喋っていたんです。しんどい試合になる。キツい想定も、ビハインドの状況で攻める練習も、ずーっとしていました。だからそれをやるだけだ、って」
合言葉は『想定外も想定内』。
「決勝とは、そういう所。何が起こっても、受け入れるしかない。その時のために、準備もしてきました。今日のミスと『律』は直していかないと、もしこれが花園だったら20点30点取られての負けゲーム。僕たちの甘い所だと思うので、これからの40日間で自分たちをどれだけ律することができるか、そこにフォーカスしたいなと思います」
59期が掲げたスローガン『律』を追求する、花園2連覇の旅路へと向かう。
Pick Up Players
15番・古賀龍人バイスキャプテン
「勝ってホッとしています。でも今日の喜びは、今日でおしまい。花園までの約40日間が大事になるということは、昨年の経験から分かっています。チームが良い成長をできるように、毎日練習していきます」
夏合宿で負傷し、チームを離れた秋。
わずか数か月間で3年生それぞれが成長し、練習中に互いを指摘し合うことができるようになったと喜んだ。
9番・後藤快斗選手
主将・副将を欠いた9月・10月。
西野誠一朗選手とともに、キャプテン代理を務めた。
「周りに目を配るようになった。声掛けの質も変わりましたし、言ったからには自分もやらないといけないと思うようになりました」
藤原秀之監督は、最も成長した選手の1人に挙げた。
10番・丹羽雄丸選手
今季、15人制の公式戦では初めてのフル出場となった丹羽選手。
全てのプレイスキックを成功させ、試合を決定付けるラストトライも挙げた。
「チームメイトが頑張ってくれたから、自分はできることをやるだけ。気が楽でした」
気負わず、だが枠割を全うする司令塔を体現した。
12番・德山凌聖選手
大阪府は東大阪市出身。
花園ラグビー場から、自転車で15分ほどの距離で生まれ育った。
昨年の花園では登録メンバー入りならなかったが、その代わりに、次世代を見据えた強化枠『育成メンバー』として、大阪城の周りを毎日走り込んだ。
だから自身が掲げる今年の目標は『花園の育成から、花園の頂点へ』。
「育成から花園の頂点へ、行ってやります」
来年は絶対にこの舞台に立ちたい、と願った場所に、たどりつく。
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