花園2024、開幕。&rugbyが選ぶ注目校一覧

Aシード・桐蔭学園高等学校

神奈川県代表・2大会連続22回目の出場

「そんなに大きくはないけど、速め。縦の波には弱いかもしれない」

今年できあがった戦闘艦・桐蔭学園第59期号を、藤原秀之監督はそう表現した。

さかのぼること11カ月前。

1月13日に行われた神奈川県新人大会準決勝を終えた藤原監督は、厳しい表情で言った。

「まだ船を作っていない。筏(いかだ)にもなっていない。いつ作り終えるかは本人たち次第。木材を探しているんじゃないですかね。木を切る所から、廃材しかないかもしれないけど」

そして「冒険はできないかもしれない。大海原には出れないかもしれない」と、花園出場を危ぶんだ。

スポンサーリンク

たしかに厳しい船出だった。

やりたいラグビーの形も不明確だった、シーズン序盤。

2月に行われた関東新人大会では國學院栃木に敗れ準優勝。

全国優勝を果たした1学年上の代・58期が常々口にしていた『覚悟』が、まだグラウンド上には表れていなかった。

しかし翌3月末に行われた全国選抜大会では1回戦で長崎北陽台を、2回戦では東海大大阪仰星と、九州・関西の強豪を次々と倒す。

準決勝で大阪桐蔭に敗れたが、しかしわずか1ヵ月で大きな成長を遂げたことは言うまでもなかった。

手元の材料を、どうかけあわせながら調理するか。リソースと時間軸をブラさず強化を進める桐蔭学園に、強さの一端を見せつけられた。

さらに翌4月末から行われたサニックスワールドユースでは、海外勢と対戦するための『策』を用意する。

海外レフリーのレフリングに適応するため、ラックを捨てるという判断も。

ここ2年、桐蔭学園はこういうラグビーがしたかったのではないか、と思わせるような球繋ぎも披露した。

速いテンポで、確実にボールを繋ぐ。そのための体の翻し方、腕の出し方、目線。すべてが噛み合った大会だった。

気付けば策は武器となり、数多ある引き出しのうちの一つとなった。

シーズンスタート当初には危ぶまれた花園出場権も、11月にはしっかりと手にした。

12月上旬に行われた常翔学園との練習試合ではトライ数1本差と薄氷の勝利だったが「チャレンジしたいことに挑戦した結果のミス」と指揮官は前を向く。

そう、今年の『59期桐蔭学園ラグビー部』はまだ未完成。でき上がりは、花園の舞台。

昨季の優勝メンバーであり、現在関東大学対抗戦Aで戦う、あるOBは言った。

「正直(優勝する可能性は)フィフティーフィフティーだと思う。だけど50%ある」

50%を100%にできるのが、ディフェンディングチャンピオン・桐蔭学園。

快速船で、勝負に出る。

広告

藤原秀之監督コメント

やっと出航ができる。いまは出航前の総点検の段階。どんな機能があって、どこまでスピードが出るのか。スピードを出しすぎちゃったら壊れるところもあるので。

ーー2回戦・30日の相手は流経大柏と富山第一の勝者だが

30日が一番難しい試合になる。流経さんとは今年も合同練習を繰り返してきた。今更隠すことは何もない。(組み合わせが決まった後の)12月中旬にも合同練習を行います。手の内は全て知っている間柄です。

昨年花園を実際に経験したのは、申・新里・古賀の3人。最初のゲームに入るにあたり、優位性がどこにあるか。(30日の試合が)クロスゲームになることは想定できるので、1点でも凌ぐ、というゲームをしなければいけないと思っています。

申驥世キャプテン コメント

(チームメイトを見ながら)こいつらと一緒に、自分たちのやりたいラグビーを存分にやって、やるべきことを遂行して、自分たちを『律』して、花園優勝して終わりたいなと思います。

広告

注目選手

キャプテンのFL申驥世選手がスキルフルに前に出れば、バイスキャプテンのFB古賀龍人選手はキックでエリアを押し上げる。

主将・副将がともに怪我で離脱した夏の終わりには、LO西野誠一朗選手とSH後藤快斗選手がキャプテン代理を務め、今では「二本柱」と藤原監督評。

松本桂太選手、徳山凌聖選手らセンター陣が役割を遂行するかどうかも「鍵を握る」という。

大けがから復帰したスタンドオフの丹羽雄丸選手のゲームコントロール力と、センターからバックローにポジション変更してわずか1年強のNo.8新里堅志選手の推進力も魅力的。

またフッカーは2年生の堂薗尚悟選手。飛び級で高校日本代表候補にも選出されている実力者。「59期のみんなと優勝を目指したい」と挑む。


古賀バイスキャプテン「チームが苦しい時、攻撃の起点となれるようなプレーをしたい」

広告