Aシード・石見智翠館高等学校
島根県代表・34大会連続34回目の出場
チーム史上初のAシードを獲得した、石見智翠館。
しかし道のりは苦しかった。
春、全国選抜大会で2度目の準優勝。
だが、その1ヵ月後に行われたサニックスワールドユースでは日本チーム最下位の成績に終わる。
秋、単独チームとして出場した国スポでも準決勝でオール東京に敗れ、決勝進出を逃した。
「ディティールを大切にできなかったことが敗因。申し訳ない」と口にしていた祝原久温キャプテン。
厳しい練習を積み重ねていたことに疑いの余地はない。
だがその表現方法に、もがいていた。
今年の石見智翠館3年生たちは、とりわけ優しい。
たった1人の女子マネージャー・大向梨愛さんを「日本一のマネージャーに」と誓い、練習に励む選手たち。
大会に入ればメンバー外の3年生たちが分析を担い、夜遅くまでハードワークをいとわない。登録メンバーよりも早く起き、選手たちの洗濯だって請け負う。
だからこそ祝原キャプテンは言う。
「僕が筆頭に、というよりも、全員で横一列になって。手を取り合って前に進んでいきたいです」
3年生部員数が40人を超える今年の智翠には、そのスタイルが合うのではないかと言った。
そんな石見智翠館のラグビーは、これまでも花園で大化けした。
2年前も夏・秋と苦しんではいたが、1月1日には『狂ったラグビー』を130%のプレーで体現した実績を有する。
いかに大会中に化けるか、が大きなカギとなることは間違いない。
「これまでの大会で得た課題を解決して、自信は伸ばしながら花園を迎えたいです」と祝原キャプテンが話したのは、10月のこと。
「やり返すビジョンは見えています。待っといてください。スコアが逆になるぐらい、絶対花園の決勝でやり返します。滾(たぎ)ってます」と宣言した3月末の気持ちを、花園で思い出したい。
日本全国どこへでも、大きな自前のバスを顧問の先生たちが交替で運転し、試合へと向かう石見智翠館。
長距離バス移動が常の石見智翠館にとって、トラブル対処は慣れたもの。
選手たちのおおらかな性格は、おそらくそういった環境からも醸成されているのだろう。
とにかく仲が良くて、明るくて、高校生らしい。
なにより、優しい。
だから、石見智翠館は石見智翠館のままで。
Aシード・石見智翠館ではなく、石見智翠館としてのラグビーを、花園で待ち望む。
注目選手
フッカーにナンバーエイトを兼任する祝原久温キャプテン。もちろん高校日本代表候補であり、世代屈指の豪快さが魅力的。
その姿から早稲田大学主将・佐藤健次選手と比べられることも多いが、素顔は大きく異なる。どちらかというとシャイな性格で、自身でも「根は明るい性格ではない」と笑う。
FW戦は山本力優選手、山根風雅選手のロックコンビが鍵を握るだろう。実力者が実力以上のプレーをすれば、チームは必ずや勢いを得る。
バックスは原田崇良バイスキャプテンがスタンドオフとしてゲームをコントロール。センターに入ることもあるが、役割は変わらない。
久富洋希選手、久住誓蓮選手ら快足ランナーたちがタッチライン際を駆け上がる姿を今季何度も見てきたが、花園でもどれほどのランメーターを稼ぐのか注目したい。
風が強い花園ラグビー場。FB新井竜之介選手のキック力にも期待だ。
中央がHO/No.8祝原キャプテン