富山第一
チャンスが訪れたのは試合終了間際。
15番・平内陽選手のショートパントから11番・村藤将選手がボールを手にすれば、自陣から一気に駆け上がる。
「最後、攻めるしかなかった。相手の裏のプレイヤーが遠くに下がっているのが分かっていたので、裏にちっちゃいキックを蹴ってもらいました。相手が上がってきたところ、こぼれたボールが自分のところにきてくれたので、走ってトライに結び付けられて良かったです」(11番・村藤選手)
後半30分のビッグトライ。
グラウンドに立つ仲間も全員が駆け寄り、大きな笑顔が咲いた。
富山第一の今年の3年生部員は、僅か5名。そしてその5名全員がスターティングメンバーに名を連ねる。
43-0とスコアを離された後半、2番・一瀬正太郎キャプテンは仲間に肩を組むよう促すと、熱く、だがシンプルに語りかけた。
「新しいことをしなくていい。自分たちがやってきたことを100%すれば通用するから」
そして最後に全員で声をあわせ、円陣をほどいた。
一瀬キャプテンは、言葉の意味についてこう説明する。
「花園という大舞台で緊張しているメンバーもいると思ったので、その緊張をほぐしたかった。自分たちが今までやって来たこと以上を望んでしまうと、ミスが起こってしまうし、自分たちが本来したかったプレーができないと思いました。だからもう一度練習したことを振り返って、120%ではなく100%で丁寧に行えば、相手にも通用すると信じていました。だからこそ最後、あのキックでトライが生まれたのだと思います」(一瀬キャプテン)
仲間の目を見て、仲間の肩によく手を置くキャプテンだった。
「しんどい時間が続きましたが、それでもこの大舞台を仲間には楽しんで欲しかった。ラグビーは楽しむもの。できる限り、あのメンバーで楽しめるように、笑顔で励ましていました」(一瀬キャプテン)
一瀬正太郎キャプテン インタビュー
ーーラグビーパンツに書かれている『感謝』の気持ちを、どうグラウンドで表せたか?
いま僕たちがラグビーをできているのは、親や学校関係者、チームスタッフに歴代のOBやOG、富山第一でプレーしてきた人たちがあってこそ。そういった方々への感謝の気持ちを、言葉だけでなく体でも表せるように。このハーフパンツに『感謝』という言葉を刻んでいます。
相手は自分たちよりも一回りも二回り大きいプレイヤー。点差はついたものの、最後まで諦めずに選手・スタッフ全員がワンチームとなってトライが生まれたと思う。あのトライで、感謝の気持ちを伝えるべき相手には伝えられたんじゃないかなと思います。
ーー3年生が少ない中で苦労したことは?
チームの管理が難しい中でも、3年生の5人は主要ポジションを担っていました。FWをまとめたりBKをまとめたり、ハーフとしてFWとBKを繋いだりして、チームをまとめてきました。下級生が自由にプレーできるように、3年生ができる限りサポートして、できる限り引っ張れるようなプレーを見せてきました。