桐蔭学園、逆転勝利で大阪桐蔭に3度目の正直「準々決勝で戦えるなんて最高じゃん!」勝利を手繰り寄せた『腹を決める』力|第104回全国高等学校ラグビーフットボール大会 準々決勝

大阪桐蔭

幸先よく先制した。

試合開始早々、キックチャージから11番・須田琥珀選手が抑える。

前半3分にも1年生フルバック・吉川大惺選手が裏へ転がしたボールに、3年生スクラムハーフ・川端隆馬選手が反応しグラウンディング。

10番・上田倭楓選手がしっかりと2つのコンバージョンゴールを沈めれば、あっという間に14点ものリードを奪った。

FWにもBKにも揃ったタレントと、圧倒的なチーム力を武器に今季の高校ラグビー界をリードしてきた大阪桐蔭。

強みのスクラムでもペナルティを奪い、接点でも押し負けることなく大阪桐蔭らしいプレーで、この日詰めかけた15,000人の観客を沸かせた。

だが規律高く戦う桐蔭学園の選手たちに対し、この日重ねた反則数は前後半合わせて9。徐々にエリアを押し下げられると、攻撃の糸口を掴めなくなった。

不運も重なる。

バイスキャプテンの光安翔平選手(フッカー)は足の傷口が化膿し、この日はプレーが不可能な状態に。

スクラムハーフの川端隆馬選手も前日練習で右の太ももを負傷。テーピングを何重にも巻いて、グラウンドに立った。

そしてキャプテンの名取凛之輔選手(センター)は、12月2日のアタック・ディフェンス練習中に右の後十字靭帯を断裂。今大会初戦・長崎北陽台戦で実践復帰したばかりだった。

この1年間、主力として戦い続けてきた選手たちのコンディションが、ここにきて影を落とした。

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9番・川端選手の左手首には、この日ピッチに立てなかった仲間『翔平(光安バイスキャプテン)』の名が。そして右手首には、昨季のキャプテン『林田力』の名前がしたためられていた。

「昨年ベスト4で桐蔭学園さんと当たった時、9番で出場していたが完封負け。その時の悔しい思いは、出ていた自分が一番よく分かっています。チーム林田力の分のリベンジ。冬の花園、最後の大会でのリベンジだと思いプレーしました」

そう、大阪桐蔭にとってこの一戦は、春・冬制覇を懸けたものではない。

全国選抜大会、サニックスワールドユースに次ぐ、対桐蔭学園戦3連勝でもない。

花園でのリベンジ、ただそれだけを心に『チャレンジャー』として挑んだ60分だったのだ。


前日練習中に右足を痛めた川端選手。「最後の試合だったので『やったろう』という気持ちだった。昨年の分の思いを背負って、怪我してもボロボロになっても、この白のジャージーを泥臭く汚しても勝ちたかったが、花園は甘くなかった」

今年の大阪桐蔭が掲げたスローガンは『結実』。

名付け親の名取キャプテンは言う。

「最高の3年間でした。同級生に恵まれて、1、2年生にも恵まれて、本当に最高の仲間と60分間できた。ノンメンバーもメンバーも関係なく応援してくれて心強かった。応援してくれてありがとうと伝えたいです」

だが最後に、この日試合に出場できなかった仲間のことを脳裏に浮かべれば涙を零した。

「バイスキャプテンの光安の分まで、やりたかった。申し訳ない」

仲間を想うほど、こみ上げる悔しさに溢れた。

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9番・川端隆馬選手 コメント

今まで負けなしのシーズン。残り3試合も負けないで優勝して、笑顔で終わりたかったが、花園は甘く無かった。

ーー今季2回の桐蔭学園との戦いから変わった部分は

試合ごとに点差が縮まってきた。最後返されてしまったのは、1年間桐蔭さんがやってきたからこそなのかと思う。

ーー相手のコンタクトも強かった

自分たちもコンタクトを武器にしていたが、ブレイクダウンや接点で相手の方が強い部分もあった。そこが敗因につながったと思う。

ーー手首には昨季のキャプテン・林田力の名がある

昨日も連絡をもらい「絶対優勝してな」と一言もらった。優勝できずに悔しい。なので来年、この2年分の思いをつなげてくれたら、思いを背負ってくれたら。最後の舞台でリベンジしてほしい。

ーー桐蔭学園の10番・丹羽雄丸選手は中学の同級生

ベスト8の抽選で当たった時に、LINEで「よろしくな。俺ら絶対勝つから」と連絡した。今日、試合前に整列した時にも目が合って、とてもワクワクというか「絶対に負けへんで」という気持ちで試合に臨めた。

ーー実際に戦ってみて

桐蔭の2トライ目にマッチアップしたが、シンプルに強かった。

ーー試合後は

握手をして、相手から「絶対優勝するからな」と一言もらった。「俺たち大阪桐蔭の分も優勝してな」と声を掛けた。

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名取凛之輔キャプテン コメント

ーー試合開始直後のトライだった

一番いい試合の入り。波に乗って行ったが、自分たちの規律でルーズなところが出てしまい自滅し、相手にペースを掴まれ最後まで行かれてしまった。3年間日本一を目指していたが、冬の花園、敵わなかった。ただ、悔いはない。同級生や仲間には感謝しかない。後輩には花園優勝を目指してほしい。

ーーどのようなところに相手の強さを感じたか

規律の部分。ペナルティーが少なかった。基本プレーもだが、規律を守るということが自分たちよりも1枚も2枚も上手だった。

ーー今までは規律高くプレーできていたと思うが、なぜ今日はできなかったか

自分たちがやってきたことをやりたかったが、相手との接点で下げられてしまい、しっかり立てなかった。自分たちが求めていた粘り強さができなかったことが反省。

ーー想定よりも相手のディフェンスが強かった?

自分たちのファーストタックルの精度が悪かったのもあるが、桐蔭さんの方が接点で優っていることもあった。自分たちで防げることを防げていたら、変わっていたと思う。

ーーこのチームで勝ち続けてきたからこそ、リードされた時の難しさは

ずっとタフな試合だった。想定していたこともあったが、自分たちがチャレンジャーという気持ちが足りなかった。

ーーペースが悪くなった時にどう声をかけたのか

3年生が意地を見せること。規律の部分がまだだと思うので、しっかりと全員で守ろうと。コミュニケーションを切らさずに、全員で走ってバテようと話していた。

ーー堂々と戦っていたように見えた

前半、とてもよい入りができたのでその流れに乗りたかったが、相手も焦らず、後半は相手にペースを掴まれてしまい流れを変えることができなかった。

自分の責任だと思うので、チームで声を掛け合いながら鼓舞することができたらもっとよかったと思う。相手のアタック力、継続力の精度の高い2枚目3枚目、ディフェンスも粘り強い。オフサイドの1つもない。素晴らしいディフェンスだった。

ーー大阪桐蔭も進化していたと思う

今日もいいアップをしていたので自信はあった。チャレンジャーとしての意識が桐蔭学園さんの方が上だったのかな、と。

ーー今日は何を表現できたか

自分自身、とにかく体を張ること。流れを変えるようなタックルができなかったので、いい流れになるようなディフェンスをし、チームを乗らせてあげたかった。できなくて残念。

ーー2年連続、桐蔭学園の壁だった

今年こそはと思っていた。春に日本一を取り、サニックスワールドユースでも桐蔭さんに勝って優勝したが、それは忘れて今日は昨年の借りを返すこと。試合に出られなかった同級生の分まで戦いたかったが、本当に申し訳ない。

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綾部正史監督 コメント

ーなかなかマイボールにならなかった。どのあたりに相手の強さはあったか

ボールキャリアでの強さ、2番目の(選手の)速さ。形は全然変わっていない。

ーー練習試合含めて負けがなかった今年のチーム

生徒たちが頑張ってくれていた。いつか負ける時がくるかと思っていたが、ずっと我慢をして戦ってくれていた。今日この試合で負けてしまった。

ーー桐蔭対決で注目を集めた一戦

ベスト8なので、どこと対戦しても(変わらない)。力のあるチームが上がってきているので、桐蔭対決やAシード対決ということは気にしていなかった。

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