3月29日(土)に行われた、第26回全国高等学校選抜ラグビーフットボール大会 準決勝。
東福岡と京都成章の一戦は、モール対決を挑んだ京都成章がファイナルに駒を進めた。
準決勝 東福岡 5-22 京都成章
東福岡
稗田新バックスコーチは「今日はBKで負けた」と言い、青山紫雲フォワードコーチは顔を見るなり「ごめんなさい」と言った。
モールを押されたのはFW。
BKが入ったモールディフェンス対策をしてこなかったことを悔い、直接得点に繋がったことをFWコーチは謝った。
一方のBKコーチは、自陣22m近辺でのラインアウトチャンスを与える原因を作ったのはBKだと断言。最初の被トライのきっかけとなった相手ボールラインアウトは、BKがドロップアウトせずにボールを処理したことによる『判断エラー』と振り返った。
そう、東福岡は選手だけでなくコーチもが、自責で考えるチームだ。
被トライを浴びると、須藤蔣一キャプテンは手を広げ、仲間を呼び寄せた
ラインアウトからモールを組まれ、失点を喫したのは3度。
その全てのラインアウトに、東福岡は飛ばなかった。
「サック(モールを組もうとする相手選手を引き倒し、モールを組ませないようにするプレー)するつもりでした。でも雨で、足もとが滑ってしまった」と説明したのは、No.8須藤キャプテン。
モールを止められる自信はあったがゆえ、ピッチコンディションが悪い方に転んだ。
ボールを投げ入れられた場所も影響する。
東福岡の現在のモールディフェンスは、タッチライン側に押し出すことを主としている。だがこの日京都成章が投げ入れた場所は、それが難しい位置。
加えてバックスが加わりやすいようモールをコントロールされ、数で勝った京都成章に押し込まれた。
「あのモールを止めるには、BKが頭を入れない限りFW8人で止めることは難しい。僕たちはBKを入れたモール練習を、今季1度もしてきていません。だからモールトライは気にしなくていいです。あのエリアで、あのモールを作らせたことに問題があるから、そうしないようにとその前のエラーやペナルティをなくすよう修正した」と青山FWコーチは話した。
藤田雄一郎監督も続ける。
「準決勝の日に急に寒くなって、雨が降って。先制トライを取れた次は、8点差をつけてキッキングゲームに持ち込めばよかった。でも5点からずっとスコアできなかった、そこがまだ未熟なところです」
◆
2年ぶりに熊谷ラグビー場Aグラウンドへと戻った東福岡。
藤田監督は今大会を総括し、「4試合できたこと。それが一番大きい」と言った。
流経大柏戦に始まり、2回戦の関西学院戦、準々決勝の大阪桐蔭戦と、選手たちは「目に見えるように」成長する。
「発言するコメントも変わってくるし、準備も変わってくる。だけど高校生では気付きにくいことには、自分が指摘して。だから試合に勝って熊谷で時間を一緒に過ごさないと、学べないんです。昨季は(1回戦で敗れて)3日ぐらいしかいられなかったから、そこの経験値が全然違いました。ずっと僕たちと一緒にいることによって、エラー&ラーンができる。エラーして、学んで、そしてもう1回トライができる」
その繰り返しをシーズン序盤に4試合分できたことが、最大の学びだと言った。
そして。
「この3カ月弱の間にやってきたことは間違いではなかった」と知ることもできた。
だからこの先の成長曲線を、どのように描くか。経験値を得ていくのか。
「ここから先はケガ人が復帰して、新1年生も入ってきます。メンバーもシャッフルする。だから今は、ポジティブな方向性しかありません」
そして、言った。
「これからは雨の日の練習も大事にするだろうと思います」
新チームが始まってからこの日まで、練習試合含めすべての試合に勝ち続けていたという東福岡。
2025年3月30日。
今季初黒星を喫した。
強い東福岡であり続ける
強い東福岡に憧れ、育ったのはバイスキャプテンを務める3番・武田粋幸選手。
熊本県出身ながら、小学3年生の頃から東福岡に進学したいと考えていたという。
「東福岡の強いFWを見て、東福岡に行きたいと思った。小学3年生からずっと見ていたチームでした。憧れのチームです」
今季のFWは体重がある。だからこの日はフィジカル勝負で勝る算段だった。
「どれだけFWが前に持っていけるか。そこが今日の勝負所で、大きな敗因かなと思います」
バックスがミスをしたって、FWがカバーしきれなければ強いチームは作れないと心得る。
FWが強くあってはじめて、強いチームはでき上がる。
『東福岡であり続ける』ではない。
『強い東福岡であり続ける』ために勝ち続けたい、と気をはいた。
グリーンをまとい、チームの主軸として戦うようになって2年目。
憧れの東福岡は、自らでつくる覚悟だ。
どんどん攻めたい
「FWはBKを助ける。だからBKはFWを助けたい。でも今日の試合は、FWを助けることができませんでした。レベルが上がってもFWは頑張っているのに、BKはミスが多くて悔しいです」
そう話したのは、BKのバイスキャプテンを務める14番・平尾龍太選手だ。
後半50:22を蹴り込んだ平尾選手。だがトライには至らなかった
どれだけBKがミスをしようとも、FWが声を荒ぶらせることは「全くない」と平尾選手は言う。
「むしろ『次に行こう!』と言ってくれます」
それが嬉しい。だから、悔しい。
「キャプテンや古澤(FWリーダー)が『よっしゃ、FW行こう!』って言ってくれるから、BKは気持ちを切り替えられています」
それだけに、自分はFWを助ける働きをしたいのだと続けた。
アグレッシブなランナーである平尾選手。
トライを取ることが好き。だからウイングをやっています、と目尻を下げる。
「ボールを持ったら走ることが一番好きです」
時にはノットリリースザボールを取られることもあるが「ビビらず、どんどん攻めていいと思っています。攻めて攻めて、ペナルティを取られる分には仕方がない。これからもどんどん攻めたい」と言った。
その分を取り返してくれるFWを頼る。感謝し、信頼する。
そして、プレーでFWを助ける。
藤田監督は言った。
「スクラム10本組むから、BKは1本ぐらい楽にさせてね」
心強いFWがいるから、BKはチャレンジができるのだ。
男4人兄弟の末っ子。全員が東福岡のラグビー部でプレーした生粋の血が流れる。「一番アドバイスをくれるのが、一番上の兄ちゃんです」

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