中学時代は野球日本代表。U20日本代表主将が挑む、2種目めの日本代表戦。「ラグビーに感動を与えてもらった。だから自分もラグビーで感動を与えたい」

「僕、高校からラグビーを始めました」

今年度のU20日本代表キャプテンを務めるNo.8中谷陸人選手(同志社大学2年)は、笑顔で言った。

中学生までは野球に打ち込んだ中谷選手。打ち込んだ、どころの話ではない。中学生の時には野球日本代表にも選ばれた逸材だった。

打席は3番・4番・5番のクリーンアップ。内野であればどこでも守ることができ、小学生時にはキャプテン。中学でも副キャプテンを任された。

ところが、転機は2019年のラグビーワールドカップ日本大会。

「あの印象が強すぎました」

とにかく、体を張って戦うラグビー日本代表に惹かれた。

「ラグビーに感動を与えてもらった。だから自分もラグビーで感動を与えたいな、と思うようになりました」

中学時代には名門・大阪桐蔭高校野球部の監督が視察に訪れたこともあったというが、本人の「高校ではラグビーを」との希望を尊重し、同校のラグビー部へと繋いでくれたところから道は拓けた。

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だから、これが「2種類目の日本代表です」と笑う中谷キャプテン。

野球に次ぐ、2種目めの日の丸の舞台に、ラグビー歴たった4年でたどり着いた。

「野球で日の丸を背負い、君が代を歌った経験がある者として、数日前みんなに伝えたことがあります。『桜のジャージーを着る以上は、見てくれる人に感動を与えよう』って」

特定の憧れの選手はいない。中谷キャプテンが憧れるのは、あの時テレビで見た『ラグビー日本代表』そのもの。だからこそ今度は、“憧れられる側”として、しっかりと『ラグビー日本代表』を受け継ぎたい。

「U20日本代表として戦うのは、この1試合だけです。このチームでいられるのも、たった5日間。5日間でラグビーが飛躍的にうまくなるわけではありません。だからこそいちばん大事なのは、コミュニケーション。全員が声を出して、エナジーを出して、楽しむマインドで勝ちにいきます」

言葉は柔らかいが、口調はどこまでも真っすぐに発した。

「この5日間、キツいことをいっぱいやってきました。それを信じて、やるだけです」

感動をもらったあの日の記憶を、今度は自分が誰かに届けるために──。

感動し、ラグビーを選んだ。感動を与えたくて、ラグビーを選んだ。

その想いを、今。桜のジャージーに込める。

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