「こんなもんじゃないですか」
まあ、こんなもんでしょう、と桐蔭学園・藤原秀之監督は繰り返した。

6月7日(土)に栃木県・佐野市で行われた、令和7年度 第73回関東高等学校ラグビーフットボール大会1回戦。
桐蔭学園の相手は、東京都王者・目黒学院。
立ち上がりは良好だった。
前半3分、14番・大久保志哉選手がトライを決めると、その3分後にもラインアウトからNo.8足立佳樹選手がグラウンディング。
10-0と早々にリードを奪った。
しかしそこから、最後の歯車を嚙み合わせることに苦労した。
ゴール前まで攻め込むも、目黒学院の好ディフェンスに阻まれトライならず。自陣へと押し返されてしまう。
「前半、3つ目のトライを取らなかったこと。それが全てじゃないですかね」と話した藤原監督。
「あれで勝負決まってました。ああいうところで緩みが出るんです」と加えた。
その後、前半13分には目黒学院No.8ロケティ・ブルースネオル選手にトライを許し、前半20分には流れるようなパスワークからまたしても目黒学院13番・伊藤琉真選手がトライ。
コンバージョンゴールを15番・中村理応選手が全て沈めれば、10-14。
なんと春の全国選抜大会王者・桐蔭学園が4点のビハインドで、前半を折り返した。
後半開始早々、3番・田中徹郎選手のトライで再逆転に成功した桐蔭学園だったが、しかし”圧倒的な強さ”とは言い難き時間を過ごす。
試合中、藤原監督をはじめスタッフ陣は、あまり声を発しなかった。
17-14。
3点差の辛勝で、Aブロック決勝戦へと駒を進めた。
3連覇がかかる決勝戦。
しかし「あんまり気にしていないです。弱いんで」と口数少なく発した藤原監督。
「とりあえず、やります」と残し、会場を去った。
試合を終えれば、すぐさまミーティングへと突入する桐蔭学園。
自らにベクトルを向ける時間を過ごしてから、24時間後の決勝戦を迎える。
果たして、何をどう変え、何を変えずに挑むだろうか。