7月25日(金)に閉幕した、第12回全国高等学校7人制ラグビーフットボール大会。
東福岡高等学校はカップトーナメント準決勝で大分東明高等学校に12-34で敗れ、3位で大会を終えた。
3大会ぶりにカップトーナメントへと進出し、メイングラウンドでの試合に臨んだ東福岡。
セブンズチームのキャプテンを務めた平尾龍太選手にとっては、3年生にして初めての舞台だった。
「マインドセットをすること。やることは変わらないということ。自分たちの力に自信を持とう、ということ。仲間にはそれを伝えて準決勝に挑みました」
だが、決勝行きの切符を手にすることはできなかった。
大分東明との準決勝を振り返った平尾キャプテンは、敗因を冷静に分析する。
「フィジカルは勝てると思っていたのですが、相手にはスピードとオフロードパスの技術があった。自分たちはタックルに飛び込んでしまって、ラックを作らせることができなかった。オフロードパスの連続で、受けてしまって、トライまで繋げられてしまう。その繰り返しでした」
点差が開き、焦りも生まれた。
セブンズはわずか前後半7分ずつの短期決戦。
「深くラインを取って、スピードのあるアタックをしたかった。でも焦りからか全然ラインも深く取れなくて、脅威のあるアタックができなかったです。やっぱり一番は”焦り”が敗因でした」
稗田新セブンズチーム監督も、悔しさを滲ませながら語った。
「軸にしていた、キックオフの争奪戦。それからブレイクダウンを作らせてからカウンターラックをかけること。これが上手くいかなかった」
中でも最重要視していたのが、タックルスキルだった。
相手にオフロードパスを放らせないためには、下に飛び込むのではなく、腕やボールに絡まなければならない。
だが15人制に主眼を置き、鍛錬を重ねるチーム。低くタックルに入るのは、ある種“染みついたもの”だった。おそらく無意識のうちに、特に前半、飛び込むタックルが多く出てしまった。
「軸にしていたことができないと、こうなってしまうんだ、ということが出てしまいました」と稗田監督は率直に語った。
だがその敗戦もまた、学びに変える。それが、東福岡である。
「セブンズではオフロードパスを繋げてトライを取れるシーンもあった。だから、このオフロードの意識は15人制にも生かせると思います。もっとみんなと繋がって、トライを重ねていきます」(平尾キャプテン)
軸を大切にする、という教訓を得た3日間でもあった。
振り返れば、そう。
カップトーナメント1回戦では、3年前の決勝で敗れた報徳学園に12-7で競り勝ち、準々決勝では昨年予選プールで敗北した京都工学院を相手に28-12とリベンジを果たした。
そして一番は何と言っても、予選プールでの茗溪学園戦。2年前に同点で悔し涙を呑んだ相手に、42-7と快勝した。
悔しい思いを後輩たちが受け継ぎ、エネルギーへと変える。それもまた、東福岡である。
今大会、メンバー入りを果たした3年生はわずか3人。
キャプテンの平尾龍太選手に、15人制でキャプテンを務める須藤蔣一選手。そして1年時からセブンズでの出場機会を得てきた礒部聖輝選手の3人が、若いチームを引っ張った。
平尾キャプテンに「この大会で最も印象に残っていることは?」と尋ねれば、即座に返ってきたのは下級生たちの成長についてだった。
「1・2年生が合宿中にどんどん成長してくれた。(徳本)雄士とかそうです。僕たち3年生がいなくても戦える選手に、1・2年生がなりました。そこが一番印象に残っています」
ピッチ上で大きな声を張り上げ、リーダーシップを発揮したのは2年生の八尋奏選手。
決勝の舞台はこの夏もまた遠かったが、しかし何事にも変えられぬ確かな成長を手にした。
2年目の誓い
「3年生が3人しかいない、ほとんどが2年生のチームでした。15人制ではあまり出場機会を得られなかった人たちが試合に出ていたので、絶対に勝ちたかったし、ケガで来られなかった3年生の分まで、絶対に優勝しようという気持ちでした」
そう語ったのは、2年生の川添丈選手。今大会にかける強い想いを、まっすぐ言葉にした。
川添選手は昨年、入学わずか1ヵ月でグリーン(東福岡のファーストジャージーのこと)の10番を託された経験を有する。
だが今年の初夏、その背番号は1年生の肩へと渡り、自身は12番を背負うことが多くなった。
それでも、試合に出られるのではあれば、10番でも12番でも。
背番号にこだわりはない。試合に出ることこそがこだわり、とピッチに立ち、プレーで貢献することにすべてを注ぐ。
その姿勢は、今大会の結果として表れた。
東福岡がカップトーナメント進出を手繰り寄せた、予選プール最終戦・茗溪学園戦。
川添選手がたたき出した1トライ6ゴール、計17得点は、まさに勝利を呼び込む数字だった。
すべてのコンバージョンゴールを成功させた正確無比なキック。そこには、地道な努力があった。
「稗田先生から『セブンズはポゼッションが大事』と言われていました。だからキックオフのドロップキックやコンバージョンゴールの2点は、練習しました」
昨年4月。自身のキックが外れ、敗れ、悔し涙を流した試合があった。
その悔しさを力に変えた1年間。
あのとき届かなかった“2点”が、今年のセブンズで、チームを救った。
けれども、それでも、2年連続で大会最終日の初戦で敗れる悔しさを味わう。今年もまた、最終日に2試合戦うことなく菅平を下りた。
「この2年間、ずっと悔しい思いをしてきました。来年は、この経験をさせてくれた上級生たちの分まで、絶対取り返したいと思います」
想い深まる、2年目の夏。
川添選手は、強く、そして静かに、来年のリベンジを誓った。