8月1日に長野県上田市菅平高原・アンダーアーマー菅平サニアパークで開幕した、「KOBELCO CUP 2025第21回全国高等学校合同チームラグビーフットボール大会」ならびに「KOBELCO CUP 2025 第15回全国高等学校女子合同チームラグビーフットボール大会」。
大会最終日となる3日にはU17、U18ならびに女子それぞれの決勝リーグが行われ、歓喜と涙に沸いた。
互いを知り、掴んだ3連覇|U17近畿ブロック
みごとU17カテゴリーで3連覇を果たした、近畿ブロック。
予選リーグでは堅実に体を当て、焦ることなくFWを起点に得点を取り切ったのち決勝リーグへと勝ち進むと、そのカップ戦では関東ブロック、九州ブロックを相手に前半は我慢のラグビー。耐える時間をやり過ごし、後半に得点力を増した。
「力のある子たちが集まっている。いかにチームにするか、ということが大切でした。難しい戦術を落とし込むよりも、やるべきことを明確にしました」と王子拓也監督は話した。
やるべきことの一つが、ディフェンスだった。
まずは我慢してディフェンスで耐え、敵陣に入ったらしっかりとボールをキープする。自らボールを手放すことはないように、と肝に銘じた。
結果、その意図どおりのラグビーでチャンピオントロフィーまでたどり着く。
「本当によく頑張ってくれました」と選手たちを讃えた。
チームをまとめたのは、No.8米谷翔馬選手(東海大大阪仰星3年)。「体を張れる、最前線で体をぶつけられる選手。そこは信頼して」(王子監督)キャプテンに任命した。
託された米谷キャプテンは言う。
「しっかりとコミュニケーションを取って、みんなで仲良くなって、試合を盛り上げるということ。『楽しむ』ことを意識していました」
コミュニケーションを取り、一つの方向へと向かう。活動期間僅か数日間の急造チームだからこそ、ワンチームになることに注力した。
しかしその方法は、至ってシンプルだった。
チームの垣根を越えて話し合うこと。その一点に注力した。
「ミーティングも(中日に)3時間ぐらいしました。戦術を話し合うことはもちろん、いろんな人と話すことを意識していました。お互いを知って、一つの方向に向かえたことが優勝できた一番の要因だと思います」
近畿ブロックらしいコミュニケーション力を最大限に生かす、その術を学んだ。
迎える、夏。
米谷キャプテンは、ある一つの目標を睨む。
「僕の目標は、今年の高校日本代表に入ること。まだ候補には選ばれていないですが、夏、いろんな対戦相手を経験して、その目標に向かっていきたいと思います」
キャプテンとしての責任を背負い、仲間をつなぎ、結果を残した夏。そして今度は、自身の夢を叶えるために挑戦する夏が始まる。
充実を成長に|U17九州ブロック
「関東ブロックを相手には、やりたいことができた。でも近畿ブロック戦では、最初から空気にのまれてしまって、自分たちのやりたかったことができなかったなと思います」
とにかくフィジカルと運動量。そこで後手を踏んだと振り返ったのは、12番・川添丈キャプテン(東福岡2年)。
しかし充実した表情で、大会を振り返った。
「今年はあと一歩で日本一に届かないことが多い。夏は、その一歩を届く夏にしたいと思います」(川添キャプテン)
充実。
それは川添キャプテン1人だけが感じたものではない。
1年時から大分東明のトライゲッターとして活躍しているWTB山本愛翔選手(2年)もまた、大きな成長を手にし自信へと変えた。
「即席チームだったので、コミュニケーションを取ることがすごく難しかったです。チームプレーでも合わないことがありましたが、練習を重ねるにつれチーム力が上がる様を感じました。負けはしましたが、すごく良いチームになったと思います」
シャイで、人見知り。元来、気持ちを言葉に変えることが「めちゃくちゃ苦手」だという山本選手。
だが、今後の日本代表活動を見据える上で「すごく大事になる」というコミュニケーション面で、このU17九州ブロックとしての日々は「とても勉強になりました」と柔らかな表情を見せた。
8月末に行われるU17日本代表にも選ばれているため、これから迎えるは人生初の日本代表活動。
「日本代表でも良い活躍をして、周りとコミュニケーションをとって、チームとしても、自分としても良いプレーをしたい。ここで学んだことを自分から発信していきたいです」と誓った。
課題と向き合う夏へ|U17関東ブロック
「このぐらいのレベルになると、どうやってスコアをして、どうやって勝つのか。その難しさを改めて感じました。この暑さと、このスケジュール。いくら想定していても、想定外のことが起きる。それがコベルコカップの楽しさでもあり、難しさでもあります」
指揮2年目を迎えた廣瀬慎也監督は、そう振り返った。
決勝リーグでは、アタックテーマを『21点取れるアタック』と定め挑んだ。
3トライ以上を奪うことは簡単ではない。だからこそ、それをターゲットとし、いかに短い時間で勢いをもたらせるか。セットプレーからのアタックを主軸に置きながら、トライが取れる位置で戦うことを重視した。
だが、九州・近畿といった強豪ブロックのフィジカルを前に、我慢強く得点を取り切ることの難しさも痛感することに。
「ボールを動かしながら、いかに前進するか」
ラグビーの原理原則に立ち返り、全国の壁の高さを思い知った。
そんななか、廣瀬監督がチーム内MVPに選んだのが、FL堺史道選手(桐蔭学園2年)だ。
「最後の最後まで体を張り続けた。とにかくずっと同じワークレートで、ずっとタックルして、ずっとボールの側にいた。彼の持ち味が随所に出ていた」と称賛を送った。
しかし当の本人は、そのタックルに課題を見出す。いやむしろ「自信がなくなった」とまで言った。
「(タックルで)刺さってはいたのですが、やっぱり力負けしてしまった。まだまだ改善点があります。自分の強みであるタックルが、全国で通用しないということが分かりました」
全国の同年代に対して、どれだけ自らのプレーが通用するかと楽しみに挑んだ大会。
だが「自分の体の弱さ、体の小ささを身に染みて感じました。日頃の練習の甘さが分かった気がしました」
全国レベルでは、体が小さいことは承知済み。だからこそタックルした時に、力任せではなくレッグドライブをして、その場で倒せる、もしくは押し返せる選手になりたい。
「自信がついた、というよりも改善点がたくさん見つかった大会になりました」
これからの1年半、桐蔭学園で学ばなければならないことがたくさんあることを知った。
一方、チームの副将として背中を預けられていたのがWTB飯泉敢太選手(早稲田実業2年)。監督からバイスキャプテンに任命された時には「正直驚いた」というが「全力でチームを引っ張っていこう」と気持ちを込めた。
大会最終日。
近畿ブロックに3-17で敗れると、九州ブロックにも12-28で敗戦。敵陣に入ってもトライのとり切れない、苦しい時間が続いた。
「バックスが、どこかで打開したい」
グラウンドに立つ飯泉バイスキャプテンは何度も仕掛けたが、及ばなかった。
やりたかった形がある。
中盤に入ったら、裏のスペースに蹴り込むこと。
しかし「ちょっとしたスペースに、自分たちの欲が出てしまいました。裏のスペースは見えていたのですが、蹴る判断ができませんでした」
蹴る、よりも。目の前に見えた、わずかなスペースへチャレンジする局面が増えてしまった。
だがそこでフィジカル負け。ペナルティを取られれば陣地を後退させられる、難しさを痛感した。
「なかなかうまくいかなかった。エリアを取りにいく、という自分たちの形がつくれませんでした」
今大会、バイスキャプテンとして「チーム全体を見て考える」経験を積んだ8月のはじめ。
自チームに戻っても、3年生に頼ることなく「引っ張っていける存在になっていきたい」と飯泉選手は誓う。
「この夏は、アタックスキルをとことん磨きたいです。ボールを持ってから仕掛けることは得意なのですが、ボールのもらい方が課題。ボールを持っていない時に、どう相手をズラすか。お手本は、フランス代表のルイ・ビエル=ビアレ。ボールが裏に出た時の反応がすっごい早いので、見習っていきたいです」
経験から学び、憧れから学ぶ夏に突入する。
