8月31日に幕を開けた第105回全国高等学校ラグビーフットボール大会 埼玉県予選。
記念大会となる今年は、埼玉県から2校が全国大会へと出場するため、トーナメントは2つの山に分かれて進行している。
11月8日(土)には熊谷ラグビー場Bグラウンドで昌平高校(Aシード)対深谷高校の準決勝が行われ、昌平高校が決勝戦へと駒を進めた。
決勝は11月15日(土)、熊谷ラグビー場Aグラウンドで行われる。
昌平 38-0 深谷
試合序盤、なかなか動かなかったスコアボード。
攻めた昌平、守った深谷。ディフェンスの集中力が、攻撃力を上回った。
得点板が動いたのは、前半17分のこと。昌平のフォワードが力強く縦に当たり、相手ディフェンスを引き寄せる。
すかさず外へ展開すると、昌平4番・駒井悠眞選手がグラウンディング。先制の5点を挙げた。

このまま昌平が勢いに乗るかと思われたが、攻撃のテンポは続かない。
いや、仕留めきれないと言うべきか。
スクラムからのサインプレーも、コーナーへのキックパスも、あと一歩が噛み合わなかった。
第1シードの昌平が、ノーシードの深谷を相手にわずか5点リードで前半を折り返した。

後半4分。
ペナルティから昌平5番・齊藤大也選手がトライラインを割り、貴重な追加トライを決めると、その後はスクラム起点のムーブや50:22キックなどで、徐々に攻撃にリズムが生まれ始める。
後半は昌平が5トライを奪取。試合を通して深谷を無得点に抑え、昌平が38-0で勝利を収めた。
ディフェンスを軸に、後半に修正力を発揮した昌平。決勝戦への切符を手にした。


『結』の力で、4冠へ|昌平
新人戦、関東大会予選、7人制と、今季埼玉県内では3冠を獲得している昌平。
2年連続の4冠を目指す最後の大会は、一筋縄ではいかない。

深谷との準決勝。前半を終え、奪ったトライは1つ。5-0でハーフタイムを迎えた。
第1シードの重圧か。
「自分の中では冷静だと思っていたんですけど、周りからは焦っていると指摘されました」
そう話すのは、フッカーの宮元崇キャプテン。
自身が投げ入れたマイボールラインアウトは、獲得率50%を大きく下回った。
「ハーフタイム、自分からはチームに対して声を掛けられなかったです。緊張もしていました」
花園予選が佳境を迎えているということは、このチームでラグビーができる時間も残りわずかということ。さまざまな思いが、キャプテンの頭と心を占めた。

だが、ラグビーは1人で戦う競技ではない。誰かが苦しい思いをしていれば、それを支える仲間がいる。
声をあげたのは、バイスキャプテンのFB宮本和弥選手だった。
「前半は外が空いていることを意識しすぎて、自分たちの武器であるフィジカルを出せず、外に放ったら詰められていました。フォワードからもバックドアのパスが多く、ラインアウトも決まらない。想定とは全然違う試合展開でした。だから『FWでぶつかりに行っていい。ぶつかった後に外に回せばいい』とハーフタイムに伝えました」
チームが進むべき方向を、明確に示した。

昌平が今年掲げたスローガンは「結」。
これまで昌平を支えてきた人たち。そして、これから昌平を担っていく未来の仲間たち。
過去と未来をつなぐ存在でありたいと、この世代が「結びつける」という意志を込めた言葉だ。
「結」の考案者である、SH近松哲仁選手は言う。
「僕たちはさまざまな場所から集まったチームで、それぞれラグビーに対する考え方も違う中、4冠という目標に一つになって取り組んでいます。加えて今年は2年連続で4冠を目指す年。昌平の一時代を築くためには重要な時期だからこそ、今の部員60人だけでなく、これまで昌平ラグビー部に貢献してくれた先輩方や、これから入ってくる後輩たちの気持ちを束ねて結ぶような学年になりたいと思いました」

One Team, One Dream.
昌平は、昌平として。誰かの夢ではなく、自分だけの夢だけでもなく、昌平の夢を追い求める。
決勝戦は、1週間後の11月15日(土)。
残された準備期間は6日間、時間にして518,400秒。
いまから新しいことに取り組むのは難しいかもしれない。だが、自分と仲間をもう一度信じるには、十分な時間がある。
「結」の力で、昌平はそれを示すつもりだ。
「決勝戦では昌平らしいラグビーをするために、体を当てにいきます。ディフェンスで試合をつくること。ラインアウトを修正して、次の試合に臨みます」(宮元キャプテン)
2年連続の4冠へ。昌平は、昌平として挑む。


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