止めぬ進化|深谷
チームが目指した、明確なラグビースタイルがあった。
「“堅守・深谷”でいくぞ。ディフェンスのチーム、ディフェンスから攻めるぞ!──そうやってチームを作ってきました」
そう語るのは、今年度から深谷高校ラグビー部の監督に就任した小島悠輔氏。
試合後、微笑みながら振り返った。
「『50分間はディフェンスでいい』って言っていたんですけど・・・60分、全部ディフェンスやっちゃいましたね」

前半はまさしく“堅守・深谷”を象徴する展開だった。
ラインアウトスティールにはじまり、トライラインを背負った場面でも身体を張ってボールを奪い返す。
相手は、第1シード・昌平。深谷の選手たちはボールを奪い返すたびに笑顔を見せた。

圧巻は前半終盤、相手ボールのスクラムでのこと。
昌平のスクラムハーフがボールを投入し、球が出た瞬間に、深谷のスクラムハーフ・祝迫大智選手がすかさず飛び込んだ。
ターンオーバー。見事、ボールを奪い返した。
そのプレーを小島監督は「狙っていた」と語る。
「夏の菅平合宿で(福岡県の)筑紫高校と戦った時に、いろいろ学びがありました。筑紫は福岡県で東福岡を相手に、しぶとく戦っている。だから、俺らもしぶとく戦おうと話していたんです」

夏の経験から得た“しぶとさ”は、スコアにも表れた。
ハーフタイム時、スコアボードに並んだ数字は5対0。わずか1トライに抑えたことで、チームの雰囲気は前向きだった。
「全然、負けてる感じはしなかった。ハーフタイムには『後半どれだけ相手に詰め寄れるか』をずっと話していました。だから“テンション上げていこう”って」
No.8山口來輝キャプテンは、そう振り返る。

3年生の男子部員はわずか11名。そのうち、準決勝に出場したのは5名だった。
それでも彼らは、最上級生として自分たちのスタイルを貫き通した。
「去年はベスト16。去年は越えられなかった壁を、今年は超えられた。去年の先輩たちの想いも伝わって、良い10月を過ごせたと思います」
後半に33失点を喫し、決勝へと駒を進めることはできなかったが、それでも深谷は見事ベスト4へと返り咲いた。
「自分たちはベスト4で敗れてしまいましたが、来年はこの点差をひっくり返せると思っています。花園にも出場できると信じて、後輩たちに想いを託します」
山口キャプテンは、晴れやかな笑顔でそう語った。

両フランカーは、高校からラグビーを始めた2年生。背番号7・立石悠月選手は試合中、誰よりも声を出し、何度も仲間に手を伸ばしては励ました。
試合後、涙を流すチームメイトを見つけると、笑顔で空を仰ぐ。
「俺らテレビに映ってるんだから、泣くなよ!」
その一言に、重かった空気が少しだけやわらいだ。

チームのモットーは「KEEP CHANGING」。進化し続けることを信条とする。
監督が代わり、AシードもBシードも得られなかった1年。だが、この1年があったからこそ、次の1年がある。
「山田先生(久郎・前監督)から僕に監督が代わって、3年生たちは難しかったと思います。でも3年生が良さを出してチームをまとめてくれた。みんな大人になって、立派になってくれました」
小島監督は、温かいまなざしで3年生を見送った。
男子選手も、女子選手も、女子マネージャーも。全員が“深谷高校ラグビー部”を全力でつないだ1年。
KEEP CHANGING。深谷は、これからも笑顔で、進化を続ける。

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