早稲田大学 ~やるべき仕事
試合前にこぼれた涙。
試合後にあふれ出た涙。
この日、早稲田には2つの涙があった。

試合前に感情がこみ上げたのは、1番・杉本安伊朗選手。
現在は大学3年生だが、1年間の浪人生活を経て早稲田大学に入学した“元浪人生”だ。
「浪人生の時期に、早稲田大学の校歌を歌う姿を想像していました。それで(勉強を)頑張れていました。だから、校歌を歌うと(浪人生の頃を)思い出して泣きそうになるので、今日は目つぶったんですけど・・・目をつぶったら余計、泣いちゃいました」
試合には敗れたものの、スクラムでは押し勝った今年の早明戦。
杉本選手は胸を張った。
「1年間積み上げてきた“8人全員で組むスクラム”という意識。8人の意識が変わったからこそ、優位に立てたと思います」

一方、試合後に涙をぬぐったのは9番・糸瀬真周選手、4年生。
「絶対に勝たないといけない試合だと理解して臨んでいました。あと一歩で負けてしまったことが悔しくて。それに、自分が80分間グラウンドに立てなかったこと。ベンチから敗戦の瞬間を見ることしかできなかったこと。そのやるせなさがあって、思わず泣いてしまいました」
4年生として。アカクロの9番を背負うスクラムハーフとして。
自分に対する悔しさが強かった。
「もっとやるべき仕事があったのに、それを明治さん相手に出せなかった。悔しいです。もう一回やり直したいです」

もちろん、やり直しはできない。
だからこそ大学選手権で再戦するために、早稲田は1月11日まで勝ち続けるしかない。
糸瀬選手はスクラムハーフとして、改めて誓う。
「大学選手権で厳しい山に入ったことは分かっています。やるしかない。1試合1試合、負けたら終わりという緊張感を持って、もう一度大学選手権決勝で明治と戦うために、死ぬ気で戦います。どの試合にも必ず苦しい時間は来ますが、その時に自分が一番冷静に、視野を広く、クレバーに声を掛けたい。国立競技場は声が通りにくくて、今日は個人で戦ってしまったところがありました。ワンチームで戦えるように、大きな声を出し続けることが僕の役目です」
強い悔しさを胸に、それでも前を向いて歩き出した。
