カップトーナメント(1~4位決定戦)
強度が上がる。体がぶつかる音が変わる。レベルが格段に上がる。そんなカップトーナメントは、涙と笑顔で溢れていた。
準決勝1:石見智翠館v関東学院六浦
準決勝1試合目は、昨年の決勝カード。その時は36-0で石見智翠館が完勝したが、今年は果たして。
1stトライは、石見智翠館7番。トライゲッターの芳山彩未選手だ。抜かれたらピンチ、という場面にも顔を出す彼女は、幾度となく6・7番でダブルタックルを見舞う。石見智翠館、強い。前半を10-0と2トライリードで折り返す。
一方昨年のリベンジを誓う関東学院六浦は、後半開始早々5番・松村美咲選手が22m付近で抜けてゴール中央にトライ。その2分後にもトライを重ね、後半3分、10-10と同点に追いつく。
喜びも束の間、直後のキックオフボールを石見智翠館9番・大橋聖香選手がそのまま持ち込み、約30mの独走トライ。15-10、関東学院六浦、万事休すか。
しかしここで終わらないのがラグビー。試合終了間際、関東学院六浦のキャプテン・野本葵選手がゴール中央にトライを決める。そしてこの試合両チームあわせて初のコンバージョンキックを、六浦が成功させる。
なかなか決まらなかったコンバージョンキックが、最後のトライで成功する。そしてその2点が、勝敗を分けた。
15-17で、関東学院六浦の勝利。昨年は0点で苦杯をなめた、そして何より過去2大会連続優勝している石見智翠館に対し、関東学院六浦大金星。選手たちの想いが、努力が、勝利を引き寄せた。
(水色ジャージ:関東学院六浦、赤白ジャージ:石見智翠館)
準決勝2:京都成章v國學院栃木
京都成章がキックオフからノーホイッスルトライを決めれば、國學院栃木は自陣22m付近のフリーキックから4番・田中杏奈選手がボールを持ちだす。右サイドを駆け上がり、ショートサイドにフォローに来ていた7番にオフロードパス。それを7番・中平あみ選手が片手で吸い付けるように受け取ると、50mの独走トライ。なんとも美しい、きれいな、だけど力強いトライ。トライオブザウィークに推薦したいほどの美しいトライで、國學院栃木ゲームを振り出しに戻す。
直後、京都成章もお返しと言わんばかりの独走トライを決めるが、逆サイドから追いかけてきた國學院栃木2番・佐々木理子選手がゴール中央へのトライを阻む。この少しのハードワークが、後々のスコアに響く。前半を10-7の京都成章リードで折り返す。
(紺ジャージ:國學院栃木、青黄ジャージ:京都成章)
後半最初のトライは、京都成章。しかしここでも相変わらず國學院栃木が最後まで粘りのタックルを見せ、コンバージョンが難しい位置にトライをさせる。
一方、仲間の悲鳴にも似た声援を受け続ける國學院栃木は、1トライ返すもコンバージョンを決められず。なかなか3点差を縮めることができない。時間が経過すればするほど、國學院栃木の焦りがプレーに表れはじめる。リスタートボールがノックオンになったり、ノットリリースザボールを取られたり。
そして無情にも響く、ノーサイドの笛。15-12で、京都成章が初の決勝進出を決める。
試合終了とともに泣き崩れたのは、國學院栃木の小坂海歩キャプテン。最後はベンチから見守った。力強く、ワクワクするラグビーをみせてくれる國學院栃木。来年以降も、ぜひこの舞台で戦ってほしい。
3位決定戦 石見智翠館v國學院栃木
序盤、國學院栃木陣でのプレーが続く。長い攻防の末、1stトライは石見智翠館7番。芳山彩未選手が持ち込み力強くトライした時には、前半4分を回っていた。
國學院栃木は5番・高橋夏未選手のボールキャリーが随所で光るものの、なかなか得点までは結び付けられない。5-0と石見智翠館リードで前半を終える。
後半最初の得点は、國學院栃木2番・佐々木理子選手。30mを越える距離を力強く走り切った。5-5、同点。ここから巻き返そう、と思った矢先、国栃5番がシンビンで2分間の退場。その隙を石見智翠館は逃すまいと、またしても7番・芳山選手が80mに及ぶ独走トライを決める。ボール嗅覚に優れた、強い選手だ。
ホーンも鳴り、12-5で迎えたラストワンプレー。國學院栃木は一矢報いようと繋いで繋いでボールを回し、意地のトライを決める。ただ、場所はゴール右隅。残念ながらコンバージョンは決められず、12-10で石見智翠館の勝利となった。
(紺ジャージ:國學院栃木、水色ジャージ:石見智翠館)
決勝戦 京都成章v関東学院六浦
決勝戦は、創部3年目で初の決勝進出を果たした京都成章と、昨年のリベンジに燃える創部6年目・関東学院六浦の戦い。
京都成章ボールでキックオフすると、積極的に右に左にと展開し、最後は1番・安井ノエルキャプテンがトライ。その3分後にも、敵陣10m付近で相手ボールを3番・麻田瑞月選手が見事なターンオーバーを決める。
前半5分で12-0。京都成章の一方的な展開になるかと思われた矢先、関東学院六浦の1番・向來桜子選手がゴール中央まで持ち込んでトライ。7点を返す。前半終了間際には、強烈なハンドオフからボールを繋いだ関東学院六浦がまたしてもゴール中央でトライ。12-14と関東学院六浦が逆転し、前半を折り返す。
後半は、開始直後から激しい肉弾戦が続く。体がぶつかる音が、スタジアム中に響く。無観客だからこそ、ピッチ上の音が際立つ。2日間で4試合目でも、全くワークレートが落ちない。
セブンズのワールドシリーズを見ていると思う。強いチームは、勝ちあがる程に強さが増す。この2チームにも、通ずるものがあった。
特に際立っていたのは、京都成章。接点の激しさ、一歩目の出足、パス・タックルの正確性。なんなら走力まで。後半になっても、いや後半の方がむしろ上回っていたように感じる。
(青黄ジャージ:京都成章、水色ジャージ:関東学院六浦)
後半の4トライは、すべて京都成章が奪った。「全体的にバランスの取れたチーム」と前評判の高かった京都成章は、しかし強力フォワードのハードワークが光る。この試合全6トライ中、フォワード3人で計5トライ。なんとも頼もしい。
関東学院六浦にとっては、キーマンである4番・中島涼香選手が1日目に負傷してしまったことも大きかったのだろう。
試合終わってみれば、スコアは34-14。京都成章が、創部3年目で初の全国制覇を果たした。
2位:関東学院六浦
3位:石見智翠館
4位:國學院栃木