大島さんは、1994年に同校を卒業した大東文化大学のOB。高校時代、授業でラグビーをした時に良い思い出が出来ず、どちらかと言えばラグビーは苦手だった。
そんな大島さんを変えたのは、大学4年生の時に出会った井澤航選手。仲間と大東ラグビー部を応援すべく熊谷ラグビー場に行ったとき、一学年下の井澤選手に目が釘付けになった。「この人のラグビーは面白い」
翌年井澤選手がキャプテンになると、大東の試合に通い詰めるようになった。「きっと優勝するな、と思って。」
予想通り、その年の大学選手権で大東は優勝。「優勝の瞬間が忘れられなくなっちゃったんですよね。後半35分過ぎ、1トライ1ゴール差以上がついた時に何にも感じなくなっちゃって。なんというか、ふわふわとした、でもすごく気持ちのよい時間でした。」
あの感覚を、もう一度味わいたい。それ以降、大東の試合はほとんど現地で観戦している。
応援で会場の空気を変えたい
大島さんに転機が訪れたのは、2015年度の大学選手権。
実は2015年シーズンまでは、バックスタンドの端、22mよりもインゴールに近い方に座って声を出していた。ど真ん中で応援するのが、少しはばかられたからだ。
ところが、大学選手権準決勝で帝京大学と相対した時に感じたのは、帝京の圧倒的な空気感。それもそのはず。相手はあの、坂手淳史主将率いる大学選手権を連覇中の王者・帝京大学だ。
当時の絶対王者を相手に、空気に飲まれたか。大東は前半開始10分で、3トライ連取されてしまう。「客席にも『帝京が勝つよね』という雰囲気が漂っていた」と振り返る大島さん。しかし前半の10分を除けば、残りの70分間は互角の戦いが出来ていたという。
「この時に思ったんです。試合開始10分が肝だと。『帝京が勝つよね』という空気が会場中出来てしまっていて、選手たちも完全に空気に飲まれてしまっていた。あの開始10分さえ会場を大東の応援ムードにできていれば、接戦に持ち込めていたかもしれない。」
反省した。なんで、こんな遠慮していたのだろう。派手にやっていいじゃないか。いやむしろ、応援で会場の空気を変えることができれば、流れを引き寄せられるかもしれない。
そこで2016年シーズンからは、スタンドの中央で応援をはじめた。観客席を、大東の応援ムードにさせるために。そしてピッチにいる選手たちの背中を押し、メンバー外の選手たちの自発的な応援を誘発するために。
いつでも大東の優勝を信じている
最後に語ってくれた。
「ぼくは、いつでも大東が優勝すると思って応援しています。大東が優勝すると信じているんです。」
今年は、コロナ禍ということで声を出しての応援ができない。だからいつもやっている応援を、YouTubeにアップした。「選手たちに伝えたかったんですよね。声は出せないけど、毎年と同じように応援しているよ、って。」
選手にもチーム関係者にも話掛けることはなく、サインをもらうこともない。練習は見に行かないけれど、練習試合には必ず駆け付ける。遠征先で監督と同じ電車に乗り合わせそうになった時には、わざと乗り遅れる素振りをとったりもする。
「この距離感が、僕にはちょうどいいんです。」
誰よりも近くで、誰よりも熱量を持って、だけど少し離れた所から。大東の優勝を信じて、大島さん、もとい『大東スクラム押せ押せおじさん』は、これからも声を響かせる。
Youtube「押せ押せ大東おじさん」チャンネルより抜粋
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