決勝② 川越東v深谷【第100回全国高等学校ラグビーフットボール大会埼玉県予選】

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後半の入りも、ペースを掴んだのは前半同様川越東だった。

後半5分、ラインアウトから12番・柴田恵汰選手がトライを決める。準決勝後、望月監督は「チームが勢いづくかどうかは柴田に掛かっている」と語っていた。その、柴田選手のトライ。この試合も得意のタックルを量産した。「ディフェンス面ではタックルが刺さる場面もあったが、トライはフォワードの頑張りのおかげ」

 

川越東陣から聞こえる、「守んな!攻めよう!」「花園に行こう!」の声。対する深谷サイドからは「敵陣でプレーしよう!FW、やりなおし!」と指示が飛ぶ。

まさに、意地と意地のぶつかり合い。どちらがより、花園に行きたい気持ちが大きいか。どちらがより、ラグビーの神様を味方につけられるか、の勝負。

 

後半2つ目のトライを奪ったのも、川越東。敵陣22m付近、右サイドでのラインアウトから大きく左に展開し、タッチライン際でボールを受けた8番・渡邉選手が切り込んでトライ。後半20分、17-7とリードを広げる。

川越東、勝利へのカウントダウンに入ったか、と思った。

が、戦いの相手は百戦錬磨の深谷。直後のキックオフから敵陣深くに入った深谷陣営は、キャプテンの須藤選手がラックの真上を越えてインゴールを目指す。「研究していたので空いていることが分かっていた。でも取り切れなかった、悔しい。」残念ながらトライは奪えずも、一連のプレーの中でペナルティを獲得した深谷がタップキックでリスタートすると、超重量級の3番・竹内選手が再びのトライ。17-14と、1トライで逆転する所まで盛り返した。

 

深谷のノンメンバーから響く、「深谷、花園行くぞ!!!」の声。その声にピッチから微笑んだのは、3番の竹内選手だった。

後半25分。ここから、深谷の最後の攻撃が始まる。

タッチライン際でタックルされても、押し出されない。決してペナルティも犯さない。ラインアウトでスティールされようとも、勢いのまま再びボールを奪い返す。

そして進んだ、80m。最後は、やっぱり十八番のモールを選択した。

1m、2m。辿り着いた先は、インゴール。

「深谷のトライだ。」そう、誰もが思った。川越東の望月監督でさえ、負けた、と思った。

でも、ピッチ上にいる川越東の選手たちは諦めていなかった。「ボールのグラウンディングをレフェリーが確認できなければトライじゃない。」江田キャプテンは、モールがインゴールに入った瞬間、覆いかぶさった。ボールをレフェリーの視界から消し、トライを阻止するために。

もしかしたら、深谷はグラウンディングをしていたかもしれない。でもラグビーは、レフェリーがグラウンディングを『確認できるかどうか』で判定が分かれる。

 

結果は、インゴールパイルアップでノーサイド。

 

長年、埼玉県北部勢が埼玉県の王者として君臨してきた。

そこに風穴を開けたのが、南部の浦和に東部の昌平。残るは、西部地区だった。

昭和46年の朝霞高校以来、じつに49年ぶりに西部地区から埼玉県王者が誕生した。

川越東高校、花園初出場おめでとう。そして新人戦とあわせての2冠達成にも、最大限の賛辞を。

 

***

深谷には、応援席にいる保護者以上の応援団がいた。

深谷は毎年全校をあげてラグビー部の応援に出向くのが恒例。だがコロナ禍で入場が制限されたため、いつも観に来てくれていた仲間が応援に来られない。そこで、深谷の先生たちが、クラスメイトの写真を撮って応援旗を作ってくれた。「やりきれ!!!」「自分を信じて」の、メッセージ付きだ。

会場にはいない人たちの声援が、届いたような。そんなラストワンプレーだった。

 

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