後半も、日大の勢いが止まらない。
フッカーにバックローまでこなすウイング出場の水間夢翔選手は、強烈なボールキャリーを見せる。自陣でボールを受け取り左サイドを駆け上がると、タックルに待ち構えていた明治10番の森選手を逆に吹き飛ばした。まさしくこの日、秩父宮が1番沸いた瞬間だった。
後半出だしの空気をものにした日大は、ノンメンバーたちが見守るスタンド前でモールを押すと、念願の初トライを決める。後半3分、コンバージョンも決めて12-7と5点差に詰め寄った。
勢いに乗ると恐ろしいのが、リーグ戦を勝ち上がってきたチームの怖い所。
しかし、対抗戦王者は慌てない。自らで、自分たちのプレーを取り戻す。
明治12番・廣瀬雄也選手がターンオーバーを狙って飛び出すファイトを見せる。結果は一歩届かずノックオンだったが、明治フィフティーンを鼓舞するには充分だった。
後半12分、明治15番・雲山弘貴選手がトライを決めると、そこから立て続けに2本のトライを奪う。
敵陣深くでプレーする時間が増えた明治。仲間に疲労が見えると、バックスラインからひと際大きい声で「明治取ろう!」と叫ぶ声が聞こえてきた。声の主は、13番の児玉樹選手。
セットピースと呼ばれるスクラムやラインアウトで、バックスラインのポジショニングをタッチジャッジに確認するのは、いつも児玉選手。花園を沸かせてから早くも3年が経った現・明治のアウトサイドセンターは、気持ちで仲間を引っ張る。
スクラムを押す。タックルでタッチに押し出す。そして幾度もスクラムを押す。
徐々に自分たちの本来の姿を取り戻した明治大学は、対抗戦優勝校として、そして一昨年の大学選手権覇者として。1月2日、天理大学との対戦切符を手にした。
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やりたかったプレー、準備してきたプレーをしっかりとグラウンドで表現した日本大学。ベンチには、最後まで仲間に声援を送り続けた選手たちがいた。
2年連続で準々決勝まで勝ち上がってきた日大の地力は本物だった。だがこれから先、年を越えるためには。もう一つ、壁を越えなければならない。