NTTドコモレッドハリケーンズ サイド
TJ・ペレナラ劇場、開幕。
そう言わんばかりの活躍を見せた80分間だった。
驚き、其の1。相手ボールで組まれたスクラム。素直にボールアウトしないと判断するや否や、相手のスクラムハーフがボールを触る前にNo.8に絡みに行き、あっという間にターンオーバーしてしまう。ちなみに相手のスクラムハーフとは、日本代表の田中史朗選手だ。
驚き、其の2。これまた相手ボールスクラムにて。相手9番の真後ろに立ち、スクラム内でのボールの軌道を確認。ボールがクリーンアウトすると判断すると、瞬間的にDFラインに加わり一発目のタックルを見舞う。そういえば、ラインアウトでも通常のスクラムハーフの定位置(タッチラインから5mの所)ではなく、バックスラインに加わっていた。
驚き、其の3。敵陣22m付近でキヤノンが反則をすると、リスタートの合図が掛かった瞬間にクイックタップ(いわゆる、ちょん蹴り)で走り出す。最高速度でディフェンスを切り裂くと、サポートに来ていた李智栄選手にボールを託し、トライをアシスト。会場中がどよめきに包まれた瞬間だった。
驚き、其の4。わずか数センチ程タッチラインを割ったロングキックを見切る、ポジショニング力。後半残り時間が少なくなった時間帯に、貴重なエリア獲得に貢献する。
これら全てに関わるのが、判断力と瞬発力だ。判断の速さと、一瞬も隙を見せない集中力は、異次元と評するには充分だった。
試合後、ペレナラ選手は記者会見で自身の役割についてこう話す。「9番は、常にボールの近くにいることが仕事です。」
通算69キャップを誇る現役のオールブラックスは、次節以降もボール近くで試合をコントロールする。
スクラムをセットする間、田中史朗選手と談笑する姿も見られた。「日本語を勉強中なので、家族や出身地について日本語で聞いていました。」
世界一流の選手が、全く手を抜かずに80分間を通してトップリーグでプレーすることの意義は、もう一つある。
周りの選手が、総じて底上げされることだ。
見ている方向とは逆方向への球出しに反応する選手たち。
スクラムからフラットに放られたパスに飛び込んでいく選手たち。
ディフェンスだって。ここぞ、という場面で何度、ダブルタックルが繰り出されたことか。
ディフェンスラインのギャップをついて縦突破を試みる山本貫太選手(24歳)の存在感も光った
今年のチームスローガンは「PLAY TO INSPIRE」
ヨハン・アッカーマンHCは言う。「選手たちには、大好きなラグビーでより良い影響を与えられるように、と話しています。」
この試合を経験して、選手たちは「もっと上手くなろう」と感じたのではないか。
そして何より、この試合を通してNTTドコモレッドハリケーンズのファンが増えたことは、間違いない。
逆転勝利のPGが決まった瞬間、飛び上がって抱き合う選手たち
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