80分の物語
HISTORY of NEC Green Rockets
「もっとできるのに」と何度も繰り返した。
「僕たちはもっとできるはずなのに。できなかった、そこに何か原因がある。」
そう話したのは、瀧澤直選手。プロップとして、最前線でヤマハと対峙した直後の言葉だ。
試合開始1分で先制したのはNECだった。
ファーストラインアウトから11番・宮島裕之選手に渡ってトライ。幸先の良い出だしだった。
しかしわずか3分後には同点にされると、ヤマハの厳しいブレイクダウンへのプレッシャーに何度もターンオーバーを許す。試合の主導権を、掴み切れなかった。
セットピース、特にスクラムにおいて伝統的な強さを誇るヤマハに前半取られ続けたコラプシング。
緑の1番を背負う瀧澤選手は「ファーストスクラムで、マイボールだったのに相手に渡してしまったことが全て」と語った。
後半に入ると、スクラムからフリーキックを獲得するなど修正点も見てとれた。しかし、秩父宮の大型ビジョンに幾度か映し出された瀧澤選手の表情は、晴れやかではない。
「相手は取られなかったアーリープッシュが、僕たちは取られた。でもそういうことも含めて、いいスクラムを組まなきゃいけなかった。自分たちがもっといいスクラムを組むしかなかった。」
思ったよりスクラムを組めた、だけど最後まで流れを引き寄せられなかった。
悔しい敗戦。
記者会見の最後に、共同キャプテンを務める中嶋大希選手(9番)は力強く語った。
「自分達で想像しなかったくらいがっかりする結果ではあったが、試合は毎週ある。下を向いている暇はない。ファンの人たちのためにも、しっかり準備をしたい。」
トップリーグでは2018年12月8日以来勝ち星のないNEC。
次節、日野レッドドルフィンズとの戦いで、2年3ヵ月ぶりの勝利を目指す。
ルーキーの山極大貴選手(4番)は試合終盤の苦しい時間帯になっても、手を頭の後ろで組み、意識的に体へ酸素を取り込む姿勢を見せ続けた。トライには手を叩き、声をあげ、仲間とコミュニケーションを取りながら80分間フル出場
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