準々決勝 常翔学園高等学校v大阪桐蔭高等学校
大阪桐蔭のフォワードリーダー、林慶音(はやしけいと)選手。
強くて優しいコミュニケーションが目を引く、ナンバー8だ。
白ジャージの上から2段目が笑顔の林選手
マイボールスクラム前、スクラムハーフの選手と静かにじっくりコミュニケーションをとる。思い通りのプレーができれば、力強くハイタッチ。
FWがブレイクダウンでファイトをした時には、左手の親指でグーポーズを取りながら「グッグッ!ナイスナイス!」と声を掛ける。
かと思えば、ハンドリングエラーをした仲間には頭を数度、優しくポンっと叩いた。
どこかで見たような既視感を覚えていると、ふと脳裏によぎったのはパナソニック ワイルドナイツのベン・ガンター選手。
林選手は、ガンター選手と同じような温かみのあるコミュニケーションが自然と取れる。
スクラム前、SHと会話をする林選手
いつ頃からこのようなアクションを取っているのか聞けば「新チームが始まってから特に意識するようになった」という。
「自分からチームをリードしよう、という気持ちがある。キャプテンの河村ノエル1人だけでは、チームはまとまらない。FWリーダーとして、しっかりと声を出すことを心掛けています。」
ゆっくりと時間を掛けて、一つ一つの単語を選びながら、そう答えた。
逆に迷いなく答えたのは、目標とする選手。中学からの先輩・奥井章仁選手(現・帝京大学1年)の名を、躊躇わずに出した。「尊敬する、憧れの選手です。」
準々決勝で戦った相手は、同郷の常翔学園。1ヵ月前、近畿大会決勝で敗れた相手だ。
「試合前のアップでは『絶対勝とう』とみんなの熱い気持ちを出し合った。おかげで最初から、桐蔭のテンポで入ることが出来た」と振り返る。
言葉通り、前半から4トライと圧倒。常翔学園が勢いに乗る前に、試合の主導権を手に入れた。
自身も後半5分にはゴールポスト真下にトライを決め、勝利に貢献する。
林選手には、大切にしている言葉がある。FWコーチから教えてもらった「リーダーは孤独」という言葉だ。
「FWリーダーとして、友達であっても正す所は正していきたいと思っています。周りからどのように思われるか分からないですが、リーダーは孤独という覚悟を持って頑張りたい」と話す。
だが、思う。彼にはきっと、孤独は訪れない。
これだけグラウンドで仲間に対し愛を持ったコミュニケーションが取れているのだから、仲間は彼を孤独にはしないはずだ。
準決勝の相手は、大会3連覇中の桐蔭学園。奇しくも3大会前の決勝カードである。
「日本一を掲げて新チームを始めた。まずは春に日本一を取って、新チームとしていいスタートを切りたい。」
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