HISTORY of KUBOTA Spears
試合前、クボタの選手たちがグラウンドに姿を現すと、大きな拍手で迎えたスタンドのファン。
希望者全員に配布されるオレンジ色のベースボールシャツを身に纏ったファンに向けて、選手たちも手を振った。
ここ数年、クボタがファンとの一体感を生み出す戦略は、ピッチで戦う選手たちにも好影響を及ぼす。
サントリーの中村主将でさえ「会場の雰囲気がクボタさんにあった」と話した。
前半はブレイクダウンへの圧力に苦しみ、自陣でのペナルティから2本、PGを献上。
前半31分、ボーデン・バレット選手への危険なタックルからバーナード・フォーリー選手がシンビンを受けると、その間にも2本のトライ許した。
「プレッシャーを掛けたい所でプレッシャーを掛けられなかった」と立川理道キャプテンが話した通り、それまで根気強く耐え忍んでいたエリアで突破を図られる。
前半終わって、23-7。あっという間に、2トライ2ゴール差以上が開いていた。
ピッチサイドで前半終了のホーンを聞いたシンビン中のフォーリー選手。ロッカールームへ戻る選手一人ひとりの肩を叩き、一番最後にロッカーへ戻る
流れが変わったのは、後半12分。一気に4枚の交代カードを切ると、クボタは前半とは全く違うチームに変化した。
それまで繋がらなかった中盤でのボールが味方の手に渡るようになり、後半14分と18分、続けてトライを奪う。
選手たちの奮起は、会場のボルテージを上げた。客席から、大きな拍手が鳴りやまない。
そして選手たちを鼓舞したのもまた、ファンの応援だった。
スクラムの時には、大きな手拍子で背中を押す。トライを決めたらもちろん、大きな大きな拍手。
23+無限の1。
ベースボールシャツの背中に書かれた「24」の数字は、温かく、そして心強い+1となって選手の背中を押した。
立川キャプテンは言う。
「クボタが望んでいる結果ではなかったが、たくさんの方がスタジアムに来てくれて、とても良い雰囲気の中試合に臨めた。」
最終節の相手は、互いに1敗同士のトヨタ自動車ヴェルブリッツ。レッドカンファレンス2位の座を掛け、ファンの応援を味方に挑む。
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最後に、フラン・ルディケHCが記者会見の最後に話した言葉をお伝えする。
「We would like to come back strong(強くなって帰ってきます)」
His story of Shinobu Fujiwara
クボタに加入して3日目。
昨年度の大学選手権で天理大学に初めての栄冠をもたらした立役者・藤原忍選手は、早くもトップリーグデビューを果たした。
ピッチに立ったのは、試合終了のホーンが鳴る直前。公式記録上は、後半40分である。
それまでベンチから戦況を見つめていた藤原選手は、同じく控えメンバーであったライアン・クロッティ選手と言葉を交わしていた。
「リザーブはどういう仕事をしなければいけないか、ということについて話していた。接戦だったので、ピッチにいる選手たちは焦りもあるだろうし、自分が入ったら落ち着かせるためにコミュニケーションを取ろうと考えていた」という。
しかし、いざグラウンドに立ってからボールに触った回数は片手程。
「早く出たかった気持ちはあるが、力不足。まだ信頼を得られていないので、日頃の練習からしっかり自信を持ってやっていきたいと思う。」
サントリーの流・齋藤両選手、そして先発の井上大介選手と3人の異なるスクラムハーフを間近で見ることで、気付いたこともあった。
「周りとコミュニケーション取って判断していた。時間配分が全然違うな、と思った。」
まだ社会人3日目、見える景色は何もかもが新鮮だ。
記者会見の最後。「今日のような接戦の時にでも、自信を持って任されるようなスクラムハーフになりたいと思う」と抱負を口にした藤原選手。
トップリーグ1stキャップで新たにした決意を胸に、歩みを進める。
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