HISTORY of KINTETSU Liners
試合前練習から、両者に差があった。
明るい声が大きく飛ぶ、近鉄陣。チーム状態の良好さ、プレーオフトーナメントへのモチベーションの高さを、窺い知る。
この試合のキーポイントは、キックチェイスだった。
スクラムハーフのウィル・ゲニア選手が高く蹴り上げたボールは、バウンドし自陣に向かって跳ね返る。
そこに飛び込んだチームメイトからチャンスが広がったのは、この試合3度程。
勝敗を決定付けた5つ目のトライも、11番・片岡涼亮選手がボックスキックを最後までチェイスすることで生まれたものだった。
「キックが乱れても、キックチェイスが良かったから結果に結びついた。片岡がいつも良いチェイスをしてくれるから、自信を持って蹴れる」と語ったゲニア選手。
チームメイトのオフザボールの動きに信頼があるからこそ、良いプレーは生まれる。
後半33分、11番・片岡涼亮選手のトライシーン
後半4分には8番ロロ・ファカオシレア選手が危険なプレーからレッドカードを受け、14人での戦いが続いた近鉄。
7人で組んだスクラムこそ押されたものの、ディフェンス面ではしっかりと1人目のタックルで出足を遅らせ、数的不利な状況を感じさせなかった。
「シーズンスタート時、大会フォーマットが決定する前に『トップ8』を目標に掲げた。来週、そのトップ8にチャレンジできることを嬉しく思います。ホーム・花園で、チャンピオンチームのパナソニックさんと戦うことになる。我々のスタイルがどこまで通用するか、良い準備をして臨みたい」と語った有水剛志ヘッドコーチ。
クラブ理念である感動”Inspiration”をどこまで体現できるか、そしてホワイトカンファレンス1位のパナソニック ワイルドナイツを相手にどこまで迫れるか。
個での能力は高い近鉄。いかにチームとして一貫性を持ってディシプリン高く戦えるか、注目だ。
次戦、昨シーズンまで過ごした古巣・パナソニックと戦うツポウ テビタ選手。 セミシ・マシレワ選手がPGを狙う時には、仲間に「Get the Line(ラインに並べ)」と声を掛けキャプテンシーの高さを窺わせた
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ゲームキャプテンを務めたマイケル・ストーバーク選手は、試合後の記者会見を「レフェリーの皆様に感謝します」という言葉から始めた。
記者会見の冒頭、大会運営関係者や相手チーム、それから応援してくれるファンに向けた感謝の言葉を述べる人は数多くあれど、まず一番にレフェリーへの謝意を語る人は初めてだった。
ラグビーにおいて、31人目のプレーヤーとも評されることの多いレフェリー。良い所は目立たない、ミスなくやって当たり前。だけれども何かの拍子に批判の対象となってしまうことは容易い、レフェリーという職業。
いや、この国においてレフェリーを職業としている人はほんの一握りだ。多くのレフェリーが、交通費だけ、または日当数千円程度で、レフェリー業を行っている。試合後には一つ一つの反則判定に対する細かなレビューも義務付けられているが、この時間に別途手当が支払われることはない。
多くの「兼業」レフェリーに、ストーバーク選手の言葉が届くことを願う。
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