HISTORY of PANASONIC Wild Knights
試合前練習を終え、首脳陣がコーチーズボックスに向かうその道中。
相馬朋和スクラムコーチ兼チームコーディネーターはメインスタンドの4階席に足を延ばすと、試合を見守るノンメンバーの元を訪れ、一人ひとりと拳を突き合わせた。
「キックオフを研究されていて、再獲得できずプレッシャーを受けた。ただそこでパニックにならず臨めていたのは、強みのディフェンスがあるから。」
司令塔の松田力也選手は、試合後にこう振り返った。
キヤノン12番・南橋直哉選手にノーホイッスルトライを許したのは、後半28分。田村優選手が蹴り上げたキックオフボールを23番ホセア・サウマキ選手が左サイドで獲得すると、右に展開した先でトライを決められてしまう。
「沢木監督を含め、良い戦術を作ってくることは試合前から分かっていた。何が起こってもパニックにならず、しっかりコミュニケーションを取る練習はしていました。(松田選手)」
インパクトのあるトライを決められると、そのまま流れを相手に持っていかれるケースもある。
だがパナソニックは、落ち着いてひたむきにディフェンスをし、ディフェンスをしながら前に出る。そしてターンオーバーした瞬間に一気に攻撃を仕掛ける。
この光景を、今季幾度も繰り返した。
試合中、FWは何度も円陣を作り言葉を交わした
この日の失点は、ヤマハ戦での19に次ぐ17。
それでもロビー・ディーンズ監督は「チームのディフェンスに満足しています」と答えた。
「キャノンの素晴らしいアタックに対して、我々のディフェンスからアタックを仕掛けることができた。(ジャック・コーネルセン ゲームキャプテン)」
「タフな試合になることは想定できた。いろいろなアタックをしてくることに対応して、ディフェンスから流れを作ることを意識しました。試合全体を通すとディフェンスが良くできたので、こういう結果になったかなと思う。(布巻峻介選手)」
全ての選手そして監督が、おなじ試合の流れを思い描き、同じ言葉で語ることが出来る。
これが、このチームの強さだ。
最後のトップリーグも、最終盤。王座を手に入れるまで、あと2勝。
「ディフェンスにプライドを持っている。我々はディフェンスのチーム。(布巻選手)」
全ての選手・監督が口にする「ディフェンスから流れを作る」プレースタイルで、野武士は準決勝の地・花園へ向かう。
試合前練習から弾ける笑顔だった福井選手。23番で出場したこの日、1トライを決めた