80分の物語
HISTORY of SUNTORY Sungoliath
『IT’S NOT JUST THE 23.』
スタンドから試合を見守ったノンメンバーの選手たちは、そう背に書かれた揃いの黄色いTシャツを身に纏っていた。
IT’S NOT JUST THE 23.
試合に出る23人だけではない。ピッチに立つ選手たちの裏には、たくさんの関わる人がいる。その人たちの想いを背負って、選ばれた23人はピッチに立った。
最後にトップリーグが成立したのは、2018-2019年シーズン。
新型コロナがまだこの世に存在しなかった2年前、サントリーサンゴリアスは決勝の舞台に立っていた。
3連覇を懸けてダン・カーター擁する神戸製鋼コベルコスティーラーズに挑んだあの日。50点もの大差で敗れた。
あれから、2年半。
新しい監督に新しいキャプテン、新しいスローガン『WE before ME』の下、太陽の巨人たちは王座奪還を目指して秩父宮の舞台に立った。
理想的な試合の入りではなかった。
ボーデン・バレット選手が放った飛ばしパスを、パナソニックのライリー選手にインターセプトされると、前半5分、先制トライを奪われた。
アタックしていても、なかなかゲインが切れず。ボールを持ちながらも、後ろに下げられる場面が続いた。
前半早い段階で2度程インゴールまで迫ったが、スローフォワードとノックオンでグラウンディングは認められなかった。
続く、苦しい展開。
突破口を破ったのは、頼れるキャプテン・中村亮土選手だった。
相手陣5mでのラインアウトからモールを試みるが、崩れ左のオープンサイドに展開。ここでもパナソニックの屈強なディフェンスラインを中々破れず、5つ6つと、グラウンドの横幅いっぱいにフェーズを重ねた。
ボールを手にした中村キャプテンは、対面のライリー選手が自分との距離を詰めたことを確認すると、ボールを柔らかく蹴り上げた。そしてインゴールで自らキャッチすれば、そのまま地面につけた。
実は、最後に栄冠を手にした2017-2018年シーズンの決勝戦。当時の司令塔、マット・ギタウ選手からのグラバーキックパスを受け先制トライを決めたのも、同じく12番を背負っていた中村選手だった。
同じような場所に、同じ選手が、同じ対戦相手の同じく決勝戦という場で、サントリーにとって最初のスコアを決めた。
前半を16点ビハインドで折り返したサントリー。
スコアレスの時間帯には、このまま2シーズン前の展開再び、かと頭をよぎったこともある。
それでもあの日から積み重ねた時間が、890日という時間が、そうはさせなかった。
このまま終わるわけにはいかない。
WE before ME.
IT’S NOT JUST THE 23.
後半のサントリーは、前半とは全く異なるチームになっていた。