筆が進まなかった。
書いては消して、書き直しては消して。
この感情をどう表現すればいいのか、分からなかった。
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8月11日に行われた、日本ラグビーフットボール協会によるTOKYO2020大会の総括オンライン会見。
いつものように、発言者の言葉を出来るだけ過不足ないよう、また言葉の意味合いが変わらないよう。少し形を整えるだけで出来るだけのそのままを届けようと、筆者は逐次文字起こしをしていた。
しかし、1時間超に渡る会見の半分を過ぎた頃だろうか。
タイピングする手を、止めてしまった。
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いくつもクエスチョンマークが浮かんだ。
これまでの努力が否定されてしまったかのように聞こえた言葉もあった。
ただ、猛烈に悲しかった。
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男女セブンズナショナルチームディレクターの本城和彦氏は「最後の国際試合は2020年の2月(女子)と3月(男子)」と繰り返した。
この1年の延期が影響した、とも。
しかし「日本に残り、国内で強化する」という選択をしたのは日本協会だった。
事実、ニュージーランドやアメリカ等では、今年に入って国際大会が幾度か開催されている。
海外と試合が「出来なかった」わけではない。「しなかった」のだ。(なお日本は男女ともに今年4月上旬、ドバイで行われたエミレーツ・インビテーショナル・セブンズに参加している)
数年前の海外での試合時、朝早くからホテルのロビーでパソコンに向き合う岩渕HCを目にしたことがある。
日本協会の専務理事と兼任であった岩渕HCが精を尽くしたことに、疑う余地はない。
コロナ禍で急遽舵取りを担ったハレHCも、持てる全てを出し切ったであろう。
しかし、質と量が正しいベクトルに向いていたのか。他にベターでベストな選択肢はなかったのか。
この5年間の歩みに対する具体的な棚卸作業が、残念ながら1時間強の総括会見では男子・女子ともに満足に感じることが出来なかった。
最も残念だったのは、これから先、日本ラグビー界がどのようにセブンズと向き合っていきたいのか推し量ることが出来なかったことだ。
選手たちはどのようなモチベーションで、9月中旬には始まる2021-22年シーズンのワールドシリーズに参加すればいいのか。
そしてファンも、どのような志を抱く「私たちの代表」を応援すればいいのか。
残念ながら、道標が語られることはなかった。
もちろん、ヘッドコーチの選任を含めた今後の方向性については〇〇検討会やら△△委員会やらで承認を経て発表しなければならない、その手筈を踏むことの重要性も重々理解する。
しかし。
5年間、少なくともこの「母国・東京で開かれるオリンピック」という大事な舵取りを任された御三方から、「未来へ託す想い」を充分に感じとることが出来なかったことが何よりも悲しかった。
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数年前、7人制でも15人制でも年代別日本代表経験のある当時10代の男子選手に、セブンズをメインでプレー出来る大学があるか聞いたことがある。
「九州の方にセブンズに力を入れている大学がある」
彼は即答した。セブンズが出来る場所を、知っていた。
セブンズの専任選手がいる。
東京オリンピック後もセブンズを主軸にしていきたい、と語った選手もいる。
チャンスがあればセブンズ日本代表を目指したい、と話す若手だっていた。
2024年、そしてその先の未来をどのように描くのか。
これからの日本におけるセブンズ競技のロードマップが描かれる日を、今はただ心待ちにしたい。