80分の物語
The Side of Waseda
今週のテーマは『ファースト』。
どんなカテゴリーであれ、公式戦の初戦は独特の緊張感をまとう。だから最初に先手を取る、取り続ける、という意味で『ファースト』を掲げたという。
その言葉の通り、縦横無尽に走り回り、右に左にと数的優位を作ってトライを量産した早稲田フィフティーン。
やることは至ってシンプルだが、故に難しい。
昨年度の大学選手権決勝で敗れた後、スタンドオフの吉村紘選手は「僕の所で判断に時間を使い過ぎ、外側の選手の時間を奪ってしまった」と反省を口にしていた。
あの敗戦から8ヵ月。この日は、テンポ良く試合を組み立てた。
プレイスキック時にキックティを運ぶのは、スタンドオフの大先輩・曽我部氏(写真左)。心強い味方が、近くで支える
早稲田の強さを感じた場面がある。
前半30分、36点のリードを奪った敵陣22mでのマイボールスクラムで、グラウンドから響いた「ここだここ!コミュニケーション!」の声。
どれだけ早い時間帯で点差をつけようとも、ワセダは一切手を抜かないことを示していた。
後半に入り、なかなかトライを奪えない時間帯が続いた時も然り。
今季から1番に転向した小林賢太バイスキャプテンが「ワセダ集まろう」と声を掛けフォワード8人を集めると、小さな円陣で「FW集中力あげよう」と仲間を鼓舞した。
その一言で、疲れを見せ始めていた選手たちの表情が変わるから不思議だ。
14番・槇瑛人選手が前半33分にハットトリックを決めれば、1年生No.8の佐藤健次選手も僅か4分間の間に2トライ。
15人の連携した動きから、前後半併せて12トライを奪った。
面白いように攻撃が続いた一方で、長田智希キャプテンは「単純なミスなど課題はある。今日のようなプレーではまだまだ足りない」と反省も口にする。
一方、この日監督として初めての対抗戦の指揮を執った大田尾竜彦監督は「前半早い段階でトライを取ってくれたこと、今日初めてジャージに袖を通した人が躍動してくれたことを嬉しく思う。先発した1年生3人は能力が高く、公式戦先発を勝ち取る力がある。大学の公式戦、対抗戦初戦という硬さも少しあったが、みんな良くやったと思う」と選手たちを称えた。
2年ぶりの王座奪還に向け、上々のスタートだ。
プレーヤーオブザマッチは4番・大﨑哲徳選手。「選んで頂いて嬉しい。チーム、FWとして課題はたくさん出たので日本一に向け精進していきたい」
フォトギャラリーはこちら