今年の選抜大会後、6年間監督を務めた久場良文監督が転勤。奈良県・御所実業高校に移った。
監督不在のピンチに白羽の矢が立ったのが、島袋法匡氏だった。
本職は小学校教諭。一般的にはその高校の教員が監督を務めるのがスタンダードだが、村全体で子どもを育てる文化があるからこその抜擢。
赴任先の小学校でタグラグビーやミニラグビーの指導をしてきた生徒もいれば、週末ラグビースクールでコーチングしてきた生徒もいる。
だからほとんどの選手たちは昔からの顔馴染みではあった。
そして何より、島袋世良キャプテンの父でもある。
「昔からコーチと父親を兼任しているので、子どもは慣れています」と、監督になっても家での過ごし方が特段変わることはない。
読谷村が大好きな島袋法匡監督。現在は村外の小学校に勤めるが、はやく村の学校に帰ってきたいと笑う【写真提供:読谷高校ラグビー部】
今年の読谷高校ラグビー部をまとめる島袋世良キャプテンは、生粋のラグビー一家で育つ。妹も読谷中学ラグビー部に所属し、キャプテン。なんとも島袋家の血筋らしい。
世良選手自身も小さい頃からラグビーボールを触り、小学1年生から本格的にラグビーを始めた。
仲間はみな、口を揃える。
「世良はチームの誰よりも、ラグビーが好きな人」
暇さえあればラグビーを見るのが日課だ。
「ラグビーは見るのもするのも楽しい。目標はニュージーランドのSO、リッチー・モウンガです。」
ラグビーが好きだからこそ、ストイック。そして、気配りの出来る天性のキャプテンシーを併せ持つ。
学校からの帰り道、空き缶を見つければ拾って帰ることもあるという。自然と目配りを覚えた、と島袋監督は父として目を細めた。
島袋世良キャプテン。卒業後は県外の大学でラグビーを続ける予定だ【写真提供:読谷高校ラグビー部】
読谷高校には、学年の壁がない。
練習終わり、談笑する輪には様々な学年が入り混じっていた。
「これから海に入ってきます」と海パン姿で目と鼻の先にある残波ビーチに向かう選手たちの風土にも、沖縄特有の温かさを感じる。
セブンズユースの日本代表合宿にも呼ばれ、桐蔭学園・矢崎由高選手や佐賀工業・後藤翔太選手ら同年代の快速ランナーたちとともにトレーニングを重ねてきた山原穏聖(やまはらとしあき)選手は2年生。15人制ではフルバックをメインポジションとする。
「フルバックとして、自分の所で止めること。悔いのないよう、出来ることを精一杯やりきりたい」と話す。
コロナ禍でセブンズユースもオンライン合宿が続くが、先日は東京オリンピックに出場した石田吉平選手が登壇。アドバイスをくれた。
「石田選手を真似て、スピードトレーニングを始めました。坂道ダッシュや縄跳びを日頃の個人練習に組み込んでいます。」
スピードでは負けない。
チームメイトも「きつい時間帯に声を出せる選手。頼もしい」と信頼を置く。
山原穏聖選手(写真左)と松尾息吹選手(写真右)
縦に強い松尾息吹(まつおいぶき)選手はセンター。仲間は「献身的で熱量が高い。チームを引っ張る仕事人」と評す。
実は県予選直前に体育の授業で負傷しギリギリの復帰となったが、決勝ではしっかりと役目を果たすつもりだ。
「悔いだけは残したくない。本番で思いっきりぶつけたい」と闘志を燃やす。
グラウンドを離れたら、後輩に寄り添って優しく接する姿も印象的だ。
松尾選手は左右両足キッカー。普段は物静かだが、ラグビー中は当てはまらない
昨年の花園予選は、決勝で名護高校にラストワンプレーで逆転負けを喫した読谷高校。
今年は、磨いてきた素早いバックスの展開スピードとFWのフィジカル武器に、チームスローガンである『元日決戦』を目指す。
グラウンドを縦横無尽に、けれども丁寧に駆け回る読谷ラグビーに注目して欲しい。
沖縄県予選の決勝は、11月19日(金)11時キックオフ。
「やることは変わらない。一日でも長く、このチームでラグビーがしたい。(島袋キャプテン)」
読谷高校ラグビー部の、花園初出場を懸けた戦いが始まる。
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