The Side of 帝京大学
これまでの試合とは異なる緊張感を漂わせながら入場した帝京フィフティーン。
「絶対勝つぞ、絶対」
そう言葉を発し、円陣を組んだ。
センセーショナルなノーホイッスルトライで幕を開けたこの試合。
慶應の10番・15番が絡んできながらも、15番・二村莞司選手は前半1分、インゴールに滑り込んだ。
2本目のトライは、細木キャプテンの代わりに3番を背負った奥野翔太選手がスコアラー。
DFラインのギャップを華麗についた力強いボールキャリーで、インゴール中央に飛び込む。
「試合前、(同じポジションでキャプテンの)細木からは『頑張れ』との一言だけでした。でもその一言で、色々と感じることが出来た。だからしっかり頑張ることが出来たのだと思います。(奥野選手)」
トライの後、2番・江良選手から祝福を受ける奥野選手
前半、ノットロールアウェーやハンドなどのペナルティをいくつか取られた。
ペナルティから失点を重ね、僅か7点差で前半を折り返すと、ハーフタイムに「グレーなプレーをなくそう、クリーンなプレーをしよう」と声を掛けたのはこの試合ゲームキャプテンを務めた上山黎哉選手。
「後半はミスも反則も少なくなって修正出来たことは良かった」と言えば、岩出監督も「クロスゲームの前半を終えてどのようなマインドで帰ってくるか、と見ていたが、リーダー陣がしっかりとしたまとめ方をしていた。大丈夫だな、と思った」と話す。
前節で負傷し、この試合はベンチから試合を見守った細木康太郎キャプテンは「反則が多かった中、自分たちの立ち返る言葉があったことで後半の点差に繋がっていった」とこの試合のキーポイントについて語った。
立ち返る言葉、とは、試合前に岩出監督が話した『徹底』と上山ゲームキャプテンの『今までやってきたことを信じてやり抜く』という言葉。
キャプテンがピッチに立っていなくても、チームをまとめられる人が何人もいる。
それが今年の帝京の強さだ。
全勝で3年ぶり10度目の対抗戦王者の座についた帝京大学。
「下級生と4年生の違いが大学ラグビーの魅力。23人の裏側には、ピッチに立てない4年もいっぱいいる。これからより期待して、僕たちもしっかりサポートしていきたいと感じました。より逞しくなったチームで、選手権に臨みたい。(岩出監督)」
いよいよ、4年ぶりの大学選手権制覇を目指す戦いが始まる。
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今年のチームが出来上がる時、4年生は自分たちでキャプテンを選出した。
そこで、細木キャプテンと同じ3番ポジションの奥野翔太選手は、自ら細木選手に一票を投じたという。
「出場機会は減るかもしれないが、細木にキャプテンになって欲しいと思っていた。細木の一番良い所は『勝ちたい』という気持ちが全面に出ている所」と真っすぐに話す。
この試合のプレイヤーオブザマッチとして名前が呼ばれると、奥野選手は屈託のない笑顔を見せた。
「久しぶりの3番。対抗戦でこれだけ長く出た試合も久しぶりでした。これまでたくさんの苦労もあったが、それを乗り越えてここに辿り着いた嬉しさが、メダルをもらった時の笑顔になった」と話す。
一方の細木キャプテンは、奥野選手のことを「甘えられる存在、だけど苦しいことをしなければならない人」と表現した。
「2年生の頃、奥野が3番で僕が18番だったこともあった。下級生の頃から、3番争いをずっとしていました。
スクラムでは、1番でも2番でもなく、3番にしか分からない3番特有の悩みがある。それを奥野とは話すことが出来た。だからこそ人間関係を築くことが出来、プライベートでも親密になることが出来たと思っています。
ラグビーの話をするだけではなく、心を許せる拠り所です。
だけど一方では、ポジションを争う人。本当はしたくない、苦しいことをしなければならない人でもあります。
苦しい、だけれども甘えることが出来る。そんなとてもいい存在です。」
心から信頼し合う2人の4年生タイトヘッドプロップは、ともに、頂を目指す道を歩む。
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