The Side of 近畿大学
「絶対勝つぞー!」
円陣を解くと、真っ先に声を発した近畿大学フィフティーン。
このチームで戦う時間を、1週間増やす戦いが始まった。
前半12分、相手陣5mの位置で獲得したスクラムペナルティ。
「シャー!近大いくぞ!!」
一度両フロントローへのレフリー注意を挟み、組まれたスクラムで再度のペナルティを得た近畿大学は、タッチに蹴り出さずスクラムを選択した。
次にペナルティを取れば、おそらくペナルティトライ。
そんな空気が会場中を包んだ中、慶應の2番・原田キャプテンと近大1番・紙森バイスキャプテンだけがレフリーに呼ばれ、数度言葉を交わし合った。
そうして組まれた、次のスクラム。
逆に、近大側のペナルティを取られてしまう。
それでも「敵陣敵陣!」「FWナイススクラム!」とバックスから声が掛かる。
試合中、常に声を掛け合い互いにコネクションし続けていた近大。
スコアレスのまま、前半を折り返す。
勝負の後半、会場中を驚かせるトライが生まれた。
敵陣5mでペナルティを獲得すると、蹴り出すと見せかけ大きく右サイドで準備をしていた14番・植田選手にキックパス。
そのままボールを押さえた。
14番・植田和磨選手は1年生らしく「もっと広がりましょう」と仲間に声を掛ける
「おっしゃーまだいけるまだいける!」
ノンメンバー席からも「ありがとー!」の言葉が飛ぶ中、後半26分には7番・宮本学武選手が強いボールキャリーを見せ、左隅でFWが体を押し込んだ。
再び3点差を追いかける時間が続いていた、後半39分。
センターライン中央でペナルティを得た近大は、ペナルティゴールを選択した。
トライ数で上回っていた。だから決めることさえ出来れば、たとえ同点でも勝利が近づいた。
キッカーは、同志社大学戦でも45mのPGを決めていた福山竜斗キャプテン。
「風上で真ん中だったので、チームに『蹴らしてくれ』と言ったら全員が『蹴ってくれ』と返してくれた。自信を持って蹴りました。」
だが、ボールはポールを逸れる。
「みんなが、最後僕の右足に掛けてくれた。そこで決められなかったのが僕の弱さです。(福山キャプテン)」
「これからもラグビーを続けるので、この4年間で授かったものを社会人でも活かしていきたい(福山キャプテン)」
残り僅かながら必死に攻め込むも、最後はスローフォワードでノーサイド。
紙森バイスキャプテンは言う。
「最高のキャプテンでした。このチームでラグビーが出来てよかった。」
9年ぶり10度目の大学選手権が、終わった。
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