明治大学
「帝京さんにおめでとうという気持ちを伝えたい。今日の試合、完敗だった。潔く負けを認めることも大事。」
試合後、神鳥監督が発した真っ直ぐな言葉に、隣に座る飯沼蓮キャプテンも大きく何度も頷いた。
この日のテーマは、『Meiji Pride』
1年間掲げてきたスローガンを体現しよう、と80分挑んだ。
しかし、帝京の圧倒的なブレイクダウンへの圧力と連携したディフェンスで、なかなか陣地を前に進めることが出来ない。
ハーフウェーでペナルティを獲得した明治は前半17分、この試合初めて敵陣22mでのラインアウトを獲得するもゴールが遠い。
プライドのスクラムも、時間を追うごとに圧力を受けた。
それでも大崩れしなかったのは、やはり最上学年の力。
12番・廣瀬雄也選手から11番・石田吉平選手へのオフロードが繋がらずインターセプトされても、最後尾に控える4年生FB雲山弘貴選手がしっかりと捉え陣地を戻す。
後半にも、15番・雲山選手から9番・飯沼キャプテン、8番・大石康太バイスキャプテンとキープレーヤーでボールを繋いだ場面もあった。
やはり4年生、最上学年。
スコアボードが動いたのは、後半9分。
ペナルティでの5mラインアウトから2番・田森海音選手が抜け出し、念願のトライを奪った。
その後もラインアウトから用意してきたプレーを繰り出したが、繋がらない。
「ラインアウトで自分たちのペースに持ち込めず、考えていたサインも止められ、そこで少しパニックになった。
SO伊藤、CTB江藤ともコミュニケーションを取ったが、圧力で取り切れなかった焦りがあった。(飯沼キャプテン)」
後半、トライを奪われた円陣で飯沼キャプテンは14人に話し掛けた。
「春から本当にキツイ練習をしてきた。そのキツさと、今と、どっちがキツイか。試合に出られないメンバーもキツイ練習をしてきた。そういう思いを背負って、明治のラグビーを出し切ろう。」
だから必ず逆転しよう、と付け加えた。
SO伊藤耕太郎選手のジャッカル。
常に3人にマークされながらも果敢に前を向いた石田選手のラインブレイク。
CTB廣瀬選手のインゴールで止まるロングキック。
インパクトプレーヤー・児玉樹選手の力強いハンドオフ。
プライドを持って前を向き続けた。
そして、最大のプライドである明治のスクラムでも「明治スクラーム!」「プライド!」
声を止めなかった。
最後まで信じた。
逆転を信じたからこそ奪った、後半35分のトライ。
ペナルティからのクイックスタートで7番・福田陸人選手が押し込んだ。
貫いたMeiji Pride。
しかし、追いつくことは出来なかった。
国立で2度目の決勝を終えた石田選手は、2年前と同様、とめどなく涙を流した。
「この点差と悔しさを目に焼き付けておこう」と、紀伊遼平選手とともにスクリーンを見つめる。
「僕が入学する前に優勝してから、あと一歩が届かない。悔しい。」
来年は最上学年。
「この1年、オリンピック含めたくさんの経験をしたが勝ち切れなかった。負け続けた1年だった。来年は足りない所を見つめ直し、究極を極めて優勝したい。」
グラウンドを後にする直前、スタンド最上段から見守ったノンメンバーを見つけると、全員で深くお辞儀をした。
「4年生を中心に本当に良くやりました。感謝の声を伝えたい。」
神鳥監督が話すと、飯沼キャプテンも続けた。
「帝京さんが強く、やりきった感が強い。完敗だな、って感じです。
例年に比べ能力は低かったが、春からみんながシンプルなことをやり続けてきたからここまで来られた。
新たな明治の色、ひたむきさを見せられたチームだったと思う。良いチームでした。」
言葉の一つ一つが論理的で、整然と話すクレバーさが光る飯沼キャプテン。
「このチームはまだまだ成長できる。」
大学選手権に入ってもチームの成長を信じ続けた飯沼組は、誇り高きシルバーメダリストとなった。
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