三重ホンダヒート
生方信孝選手、33歳。
チーム最年長は誰よりも声を出し、誰よりもポジティブな言葉を発し続けた。
写真中央
ダイレクトタッチで陣地を回復出来なかった時には「Honda、まだ敵陣敵陣!!」
FWがブレイクダウンで粘りペナルティを獲得すると、すぐさま駆け寄って「ナイスFW!」と胸を叩いてまわった。
例えトライを取られようとも「問題ない」と声を掛け、ディフェンスラインの整備を指示する。
「俺たちはディフェンスからだからな。俺たちのディフェンスをすれば絶対いける、自信持っていこう!」
前半最後、相手のカウンターアタックで一気に攻め込まれるもなんとか追いつき戻った仲間には「ナイスワーク!よくここで戻れたね」と、労いの言葉を掛けた。
古田凌キャプテンは言う。
「どこにいてもリーダーシップを発揮してくれ、試合中はゲームをコントロールしてくれる。頼りにしています。」
最年長が80分フル出場。14番としてDFにも体を張った
上田泰平ヘッドコーチは三重ホンダヒートを「若いチーム」と表現する。
それもそのはず。戦った日野RDには、生方選手より年上の選手が5人もいるのだ。
「若手が根性持って最後までしっかりと体現してくれることで、ベテランにもいい刺激になっている。若手の活躍はヘッドコーチとして幸せに感じています。」
ベテランと若手が上手く融合した、バランスの良いチームが出来上がりつつある。
ジョノ・ランス選手(31歳)の逆転トライに駆け寄った、リザーブの渡部寛太選手(26歳)。「めっちゃ頭なでなでしてあげた」と笑顔をみせた
ノーサイドの笛が鳴ると、喜びを表す体力もない程、その場で足を止めた選手たち。
しばらくして、笑顔の、温かい抱擁があちらこちらで見受けられた。
80分終わって、点差は僅か1。
たかが1点、されど大きすぎる1点。
勝ち点4を手にした三重ホンダヒート、4位・日野RDとの勝ち点差を7に広げ、3位をキープした。
***
記者会見の最後、上田ヘッドコーチは「個人的な意見として、最後に一つ良いですか」と切り出し、昨今の世界情勢について想いを述べた。
「ウクライナも、ロシアも、2か国とも素晴らしいラグビーチームを持っている。早く2か国がグラウンド上でパフォーマンスをし、お客さんを喜ばせる日が来ることを願っています。」
ラグビーが出来る幸せ。
ラグビーを見られる、幸せ。
一日も早く、世界中のどこでも笑顔溢れる日が訪れることを願ってやまない。