「楽しもう!」
「笑顔だよ、笑顔!」
中国ブロック代表・石見智翠館高校は、今年も楽しい、明るいチームで春の熊谷にやってきた。
1回戦では、近畿ブロック代表・天理高校と60分間戦って同点。抽選の結果、2回戦で東福岡と戦う権利を逃した。
「絶対に勝って、東と戦う、というのが目標だった」と話すのは、6番・大沢櫂キャプテン。
目標が潰えた中でもチームの士気が落ちなかったのは「ディフェンスに自信を持つことが出来たから」だと言う。
この日、國學院久我山を相手に一度もリードを許すことなくタフな連戦を戦い抜いた。
安藤哲治監督も「本当によくやってくれた」と目を細める。
実は大会前、東福岡と体をぶつけていた。その時に「ボコボコにやられていた」から、前日の東福岡対國學院久我山戦を見て「覚悟をしていた」という。
ところが、結果は快勝。「全国の舞台が彼らを変えてくれたな、と思います。」
どうしても昨年のチームと比べてしまうのが、新しい代に変わったばかりのこの時期の特徴。
「昨年のタレントが揃った代と比べたら、個人力が劣ってしまうかもしれない。それでも気持ちの部分で繋がり続けたら、全員で個人力をカバー出来る。(大沢キャプテン)」
だから今シーズンのスローガンは、どんなことがあっても60分間繋がり続け全員ラグビーをすること。昨シーズンの「Stay Connected」を踏襲した形だ。
この試合光ったのは、昨年のエースポジション・フルバック。
高校日本代表候補にも選ばれた上ノ坊駿介選手が担っていた最後尾である。
今年は誰が、と思えば、メンバー表には1年生の名前があった。
チーム最長身、188㎝の加島優陽選手。まだ細身だが、しかしパワフルな弾道で終始キック合戦で優位に立った。
ボールを持てば、倒れずに10m進む。
後半奪った2本のトライは、なんと加島選手のラインブレイクからだった。
先発15人の中でもう1人の1年生、13番・宮崎和史選手との連携から、1本目は大沢櫂キャプテンが、2本目は25番・重冨益昌選手がトライを決めた。
「昨年は緊張が先行していたが、2年生への進級を目前にして自信がついてきた」と加島選手は話す。
大沢キャプテンも「私生活の面でも代替わりしてからガラッと変わった。自分たち最上級生とも積極的にコミュニケーションを取ってくれる」と成長を喜べば、安藤監督は「僕らにとっても嬉しい驚き。もっとか細い感じだったが、あんなにタックルに行き、力強いプレーをしてくれるなんて。たくましくなった」と目を細めた。
昨年・一昨年とタレントが揃っていた代に比べ、今年は「まとまりがある。こちらが提示したことを愚直に体現してくれる選手たち(安藤監督)」だという。
「今日勝ち切らないと、昨日のゲームの意味がなくなってしまう。素晴らしいチームを相手に勝ちきることで、自分たちも『良いチーム』ということが証明出来たと思う。(大沢キャプテン)」
今年も、明るくて、ベンチ含めた全員が楽しそうに60分を戦う石見智翠館の1年がスタートした。
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