佐賀工業
「おりこうさん!」
小城博総監督は、19年ぶりのベスト4進出を決めた選手たちを大きな声で褒め称えた。
残り8分で12点差。
勝利のためには、2トライ2ゴールが必要だと誰もが思った。
しかし、敵陣でペナルティを得た佐賀工業が選択したのはペナルティゴール。
1年生FB・井上達木選手が落ち着いて蹴り込むと、後半22分、9点差に縮めた。
そこで輪郭を表したのは、今年の佐賀工業にしか描けない、勝利へのシナリオ。
振り返ること前半27分、FB・井上選手はドロップゴールを狙った。この時は惜しくも外れていたが、しかし点差を9点に詰めたことで、最後の逆転ドロップゴールへの道筋が出来た。
後半25分、11番・大和選手のゲインから左サイドへキックパス。10番・服部亮太選手が受け取ればトライ。コンバージョンキックも成功し、後半27分、ついに2点差と迫る。
11番の大和哲将選手は、同校OBの水間夢翔選手(現・日本大学4年)を彷彿とさせる強さとスピードを併せ持つ。「水間さんはサコウの要だった。自分も同じ11番をつけているので、超えられるように頑張りたい。」
そして迎えた、後半31分。
佐賀工業は敵陣に攻め入ると、15番・井上選手が少し距離を取り配置につく。
ボールを受け取り、蹴り上げ、ポールの間に吸い込まれるまでの数秒間が、スローモーションで映し出されたようにも感じる。
一瞬の静寂の後、レフリーが告げたのは逆転のDG成功の笛。
舛尾和キャプテンは言う。
「ベスト4という目標を達成するために、小城先生も心を鬼にして指導してくれていました。だから『おりこうさん』と言われた時には、先生の理想を叶えられた、と感極まってしまいました。」
「不撓不屈!」
「モメンタム!」
「俺たちがやってきたこと!」
ベンチに控える選手たちは、ピッチに立つ15人に60分間声を送り続けた。
タッチキックを蹴り出す時には、ピッチサイドに立つ仲間たちが大きく手を振って、蹴り出す位置の目印となる。
唯一無二のスタイルを作り上げる佐賀工業は、春の熊谷でベスト4入りを果たした。
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