日本代表
試合後、一様に悔しそうな表情を浮かべたジャパンの選手たち。
「悔しいです。勝つべきゲームだった。5週間、勝つためのラグビーを落とし込んで来ました。しっかりと役割を理解してゲームに臨みましたが、最後は遂行力の部分。もう一歩が大きい」と隠すことなく悔しさを表したのは、坂手淳史キャプテン。
所属する埼玉パナソニックワイルドナイツでもキャプテンを務め、チームを初代リーグワンチャンピオンに導いた後、自身としては初めて日本代表のキャプテンを担った夏だった。
前半2つのトライを奪うと、その後もトライチャンスを何度か得た。
ゴール前で攻撃を重ねること数度。ただ、勝負を決めるタイミングでノックオン、オフサイド、ノットストレート。あと少しのディティールが、どうにも嚙み合わなかった。
「小さなディテールの部分でミスが出てしまった。ゲームを決められる場面も多々あった中でのミス。そこには差を感じる」とは坂手キャプテン。細かな所まで突き詰めていかなければならない、と後半ノースコアで終えた80分を振り返る。
後半セットピースから一気に攻め込まれた場面では、インゴール間際のジャッカルでボールを奪い返し両手を高く上げた。逆に前半あと一歩でトライの場面で笛が吹かれると、珍しく一瞬だけ、感情を露にした。
「BONDを大切にしてきました。繋がること、絆。繋がり続けられたことは本当に良かったと思います。(坂手キャプテン)」
この試合、ゲームコントロールを任されたのは24歳の齋藤直人選手(9番)と21歳の李承信選手(10番)。
試合中は常に、2人でコミュニケーションを取り続けた。「(ハーフ団で)喋りながらやれたと思う。自分がだいぶ支えられました。(李選手については)何も気になることがなかったです」と話したのは齋藤選手。
ノックオンをした選手には駆け寄り手を合わせ、ファイトを求める場面では大きく手を何度も叩いてフォワードを鼓舞した。
サマーツアーを振り返って「経験に勝るものはない。9番を背負う経験はもちろんプラスにしかならない。(齋藤選手)」
相棒役を務めた李選手も「自陣での戦い方や疲労度合、スペースを9番10番で話し合ってコントロールしました。こういうレベルの試合を勝ち切るには80分間高い精度が必要だということも分かった。プレッシャーを味わえて良かったです。」と悔しさを滲ませながらも、前を向く。
試合後、ジェイミー・ジョセフHCは2人の若きハーフ団のもとへ歩み寄り、それぞれといくつか言葉を交わした。
「漠然としていた2023年のフランスワールドカップ。3試合を通して、想いを強くすることが出来た。(李選手)」
表彰式を終えると、スタンドから降りてきたノンメンバーたち。真っ先に出迎えたのは、坂手淳史キャプテンだった。
「このツアーを通してサポートしてくれたメンバー。グラウンドに出る23人だけが戦うテストマッチではありません。本当に全員が繋がってコミュニケーションを取れることが、今回の代表の強さだと思います。そういう中で自分たちの良い所を出し続けてくれた、そして体を張ってサポートしてくれた仲間には御礼を言わなければいけないですね。感謝しています。」
今週月曜日に急遽招集され、1週間練習を共にした小山大輝選手は「(坂手キャプテンの)背中が大きく見えた」と口にする。
「人柄も素晴らしいですし、今までよりも大きく見えました。すごいキャプテンです。」
「初めてのジャパンは楽しかった。この雰囲気を味わえたことが経験であり、コンスタントに来れるようアピールしていきたい」と話した小山選手。坂手キャプテンも「この1週間で彼の良さは凄く出ていたと思う」と話す
猛暑、そして雨降り続ける中で練習を重ねた、2022年の夏。
坂手キャプテンは「僕自身にとっても良い5週間でした」と振り返る。
「選手としても成長出来ましたし、キャプテンを務める中でチームのことをいつも以上に考えました。そういう経験は中々出来るものではありません。これからも良いリーダーシップをとって、チームに良い影響を与え続けたいと思います。」
ロッカーに戻ると、垣永選手が作ったというチームソングを歌って、2022年サマーツアーを締め括った。