「悔しかったです。」
短く紡いだ言葉。それだけで充分だった。
試合を重ねる毎に強くなる、大会中に成長を見せる東海大大阪仰星らしい姿は、今大会でも健在だった。
ただ準決勝の14分間においては、報徳学園が一つ上回る。
試合終了の笛が吹かれると、その場で膝をついた松沼寛治キャプテン。しばらく動くことが出来なかった。
グラウンド上でここまで悔しさを表現する姿は、あまり見たことがない。
悔しかったです。
どれだけ待とうとも、それ以上の言葉は出てこなかった。
「夏合宿では寝食を共にします。全員で試合をして、練習して、修正して、次に繋げる。そのサイクルを長い期間出来るので、もう一度、全員で夏の間にもう一つレベルアップして、冬の予選と花園に向けて準備していきたいと思います。(松沼キャプテン)」
後半5分、大畑咲太選手が逆転のトライを決めると、珍しく声を上げ叫んだ
2か月半前に行われた、サニックスワールドラグビーユース交流大会2022。
今季初めてトロフィーを掲げた瞬間に見せた、高校生らしい笑顔の数々をもう一度、冬に見るための夏が始まる。
決勝戦まで観戦した選手たちは、試合がキックオフを迎える度に拍手を送った。表彰式後は、初出場でボウルトーナメント3位に輝いた東海大甲府と記念撮影
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松沼キャプテンが選ぶ大会MVPは、増山将選手。
象徴的だったシーンは、準決勝の最序盤。
報徳学園に自陣深くまで攻めらると、外側で控える増山選手は、内側で踏ん張る仲間に声を掛けた。
「大丈夫、だいじょうぶ!」
「僕たちはしっかりとディフェンスを落とし込んできました。だから真ん中は抜かれない、と分かっていたので、全員で焦らずにDFしたら絶対にターンオーバー出来る自信があった。取れると思っていたので、『大丈夫』と声を掛けました。」
実際、その直後にターンオーバー。そのまま増山選手がボールを手にすると、長距離の独走トライを決めた。
本当に、大丈夫だった。
ただ、悔やんでいることがある。
報徳学園にイエローカードが出た、前半終了間際のペナルティ。敵陣深くで気持ちが焦ったか、タップキックからリスタートすると、インゴール目前で捕まりノットリリースザボールの判定。
「スクラムを選んでいたら絶対に数的優位は生まれていた。そういう所で、試合中の知識量が足りなかったです。」
セブンズのユースアカデミーにも選出され、チームを引っ張った功労者だからこそ、現状で満足はしない。
「もっとチームに良い影響を与えられるようなプレーが出来るようになりたいと思います。」
仲間とともに、更なる高みを目指す。