明治大学
「筑波大学さんがしっかり準備されてきているということは戦前から分かっていました。我々としては本当に緊張感を持って臨んだのですが、最後の最後まで諦めない姿勢に苦しめられました。まだまだのびしろがあるゲームだったな、と思います。」
神鳥裕之監督は、そう対抗戦初戦を振り返った。
取って取られ、取られて取って、と苦しんだ80分。
後半37分に石田吉平キャプテンがトライを決めるまで、7点差以上開くことは一度もなかった。
「トライ後のリスタートで、自分たちの思ったような形が出来なかった。パニックになって相手に得点を与えてしまいました。」
予想外のことが起きた時に反応できなかったこと。それがこの試合苦しんだ一番の要因だと石田キャプテンは言う。
この日プレイヤー・オブ・ザ・マッチを獲得した10番・伊藤耕太郎選手も「準備してきたプレーが出来ず、ミスが起こってみんな少しパニックになってしまった。修正することが遅くなり、流れを掴めなかった」と振り返る。
それでも「最終的にスコアを上回ることが出来た。どんな状況でも勝ち切れたことは良かった」とキャプテンが話せば、伊藤選手も「しっかり勝ち切れたことには自信を持っていきたい」と前を向く。
試合後には、選手たち自身からキックオフについての改善点も出た。
自分たちが納得できる形に修正していくことが、まずは次戦への第一歩だ。
「深まるシーズンに向け、しっかりとチーム作りをしていきたいと思います。」
神鳥監督はそう締め括って、次戦・日本体育大学戦を見据えた。
His Story is the HISTORY
来年創部100周年を迎える、明治大学ラグビー部。
第99代明治大学ラグビー部主将を務めるは、石田吉平選手だ。
およそ1ヵ月間、コンディション不良が続いた。
チームで一番のパフォーマンスを出せる状態ではなかったため、対抗戦初戦は後半からの出場。
苦しんだ前半をピッチサイドから見ていると、仲間の焦りや緊張が強張った表情からも伝わってきたという。
「だから自分が入ったら、爆発的なプレーよりも安心させられるプレーをしようと思いました。」
コーチからも求められた『安心』を考えながら行動することにフォーカスした。
先頭で入場。円陣を組んだ後、ベンチに戻った
まだ完全にはラグビー感が戻っていない状態。
しかしながら試合を決定付ける1トライを最後に決め、主将として、そしてウイングとしての役目を果たしきった。
「去年までは自らのプレーのことしか考えていなかった。今年は、明治の主将として。歴代主将の方々に恥じないような献身的なプレーをし続けていきたい、と思っています。」
そう覚悟を語れば、神鳥監督も「明治の主将を担うという覚悟、そして重責に対する責任。結果的にどう変わっていくかは、これから見ていってあげて欲しいなと思います」と見守る姿勢を口にした。
「4年間のラストイヤー。悔いなく、自分がしっかりと引っ張って、日本一に導けるようプレーしていきます。」
3年間悔し涙で迎えたシーズンエンド。嬉し涙に変える戦いが、始まった。