主将のトライで幕を開けた筑波。主将のトライで試合を決めた明治。初陣飾るは石田組|関東大学対抗戦Aグループ 第1週 筑波×明治

筑波大学

「準備したことも、出来たこともたくさんある。でもこのゲームは、善戦をしに来たわけではありません。」

試合後、嶋﨑達也監督は真っすぐに前を向き悔しさを滲ませた。

筑波らしいシーンは試合中にいくつも見受けられた。

それは決して、プレー中の姿だけではない。

ふとした瞬間に互いを思いやる気持ちが、グラウンドには溢れていた。

トライを取られた直後のこと。

バックス陣から掛けられたのは「FWが頑張ってくれているから、バックスはエリアで前進させよう」の声だった。

3度続けてプレイスキックを外してしまい、悔しい表情を見せたのはキッカーの髙田賢臣選手(15番)。

会場からも思わず声が漏れはじめると、12番・浅見亮太郎選手は自らのトライ後、髙田選手のもとへ赴き肩を組んで声を掛けた。

すると4度目の正直。後半1つ目のコンバージョンゴールを、髙田選手はしっかりと沈める。

その後50:22キックを決めた浅見選手が足を攣った時には、真っ先に駆け寄り手を貸したのが髙田選手だった。

決して一方通行ではない気持ちの矢印が、実に筑波らしい。


ルーキー楢本選手も駆け寄り手を合わせ、水を差し出す

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今年からNo.8に転向した谷山隼大選手は、試合開始直後から力強いボールキャリーをいくつも見せる。

筑波に入学し、今年で3年目。

「1年目はコロナの影響でチームに合流したのは8月。2年目はセブンズに行き負傷、復帰したのが9月でした。本来であればいろいろなことをやりたかったのに、まともにシーズン通して鍛えられた期間がこれまでなかった。今年初めて時間を掛け、トレーニングをし臨めたシーズンです。まさに今、変化が起きている状態」と嶋﨑監督は話す。

谷山選手がボールを持つことで攻撃力を増すと、チーム全員が分かっている。だからこそ、その後のプレーをラックにするのかボールを繋ぐのか、初戦は判断に迷いが生じてしまっていた。

「もう少しコミュニケーションが取れるようになれば、質も上がってくると思います。(嶋﨑監督)」

課題は明確だ。

木原優作キャプテンは言う。

「菅平合宿から明治戦に向け、色んな部分で準備してきました。FWとしてこだわってきたセットピースなど、試合で出せた部分もありました。でも明治さんは1つひとつのエラーを逃さず、逆に自分たちは活かすことができなかった。明治さんに一瞬の隙を突かれてスコアを重ねられてしまいました。後半20分以降、自分たちのディフェンスがどうしても切れてしまった部分があったこと。その残り20分で差が出てしまったゲームだな、と思っています。」

昨季逃した大学選手権の舞台。

再び出場権を得て、日本一へ挑戦するためにも、80分間の『バチバチ』を追求する秋シーズンが始まった。

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His Story is the HISTORY

4人の1年生が対抗戦デビューを果たした初戦。

6番・茨木颯選手と10番・楢本幹志朗選手は東福岡高校出身。ラインアウトでは相手チームから「ぜったい茨木!」と声が掛かるマークを経験した。

チーム3つ目のトライは、楢本選手が抜けた所でオフロードをもらったのが茨木選手だった。数十秒後の浅見亮太郎選手のトライへと繋がるプレーを生み出すきっかけを、2人で作った。

試合後、楢本選手への評価を問われた嶋﨑監督は、一ゲームメーカーとしての期待の高さをうかがわせた。

「この舞台で堂々と、全く緊張せず本当に良くやってくれています。ただいくつかキック周辺でエラーもあった。期待値が高い分、厳しめに言うと彼はもっとやれる、とも思っています。1年生という目線じゃなく今コメントしてるんですけど(笑)もう一つ二つ、うちのフォワードを活かせるようになって欲しいです。」

チームの核を成すメンバーだからこそ、求められることは大きい。


手首にはたくさんの戦術が書かれたメモが。時折確認しながらプレーを進めた楢本選手。大学ラグビーを戦っている証でもある

14番は福岡高校出身の濱島遼選手。ピンチの場面では体を張ったプレーが光った。

他の出場1年生はみな高校日本代表候補たちの中、負けず劣らずの対抗戦デビューを決めた。

兄は3年・濱島海選手

控えのスクラムハーフ、21番・高橋佑太朗選手(茗溪学園出身)は後半39分にピッチへ。

出場時間は長くなかったものの、確かな一歩目を踏み出した。


相手の主将に体を当てる高橋選手

それぞれのデビュー戦。

グラウンド最前列で迎え入れた木原キャプテンは、そんなフレッシュマンたちを讃える。

「楢本は良いキックを蹴ってくれた場面、濱島は良いディフェンスをしてくれた場面がある。茨木もラインアウトや接点周りで堂々とプレーができている。彼らの良いプレーというのは、筑波にとって刺激的であり良い影響があります。

だからこそ、彼らがミスをした時に支えてあげるのが自分たちの役目だと思っています。堂々とプレーをして欲しいです。」

支え、支えられながら、木原組は創り上げられていく。

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