明治大学
試合前練習でひと際大きな声を出していたのは、この日登録メンバーには入らなかった4年生たち。
そのうちの1人、葛西拓斗選手はタックルダミーを持ち、厭わぬ当たられ役となった。
ジャージを着ない選手たちの想いが、23人に託された。
試合開始2分での先制トライ。
明治ボールのキックオフからプレッシャーを掛ければ、ファーストラインアウトを起点に齊藤誉哉バイスキャプテンが仕留め切った。
前半9分には石田吉平キャプテンが、前半25分には安田昂平選手がトライを重ねる。
一気に3トライを奪い、21点のリード。流れを掌握した。
インゴールを背負ったディフェンスでは「焦るな」と声が飛び、落ち着いてコミュニケーションを交わす明治陣。
試合のテーマは『コネクト』。
「繋がること、チームがひとつになること。大学選手権に繋げられるように、という意味も込めた」とは石田キャプテン。
ディフェンスにおいては特に、コネクトがグラウンド上で垣間見えた。
しかし前半終盤、立て続けにトライを取られると、いくぶん下を向く選手も見受けられた。
そんな仲間を見た石田キャプテンは、仲間に声を掛ける。
「リードしている。顔を上げて、楽しもう。」
後半3分、13番・齊藤選手がインターセプトから独走トライを決めれば、みながインゴールまで笑顔で駆け寄った。
後半21分には大賀宗志バイスキャプテンが今季対抗戦初出場を果たすと、ノンメンバー席からひと際大きな歓声が飛んだ。
7点差まで詰められた後半34分、スクラムから展開した先で池戸将太郎選手がボールを押し込むと大きな笑顔を見せる。
スクラムでペナルティを奪えば、5番・武内慎選手は大きな声で雄叫びをあげた。
普段は亀井茜風選手が盛り上げ役だが、この日はベンチスタート。「明早戦で5番を背負っている。先発メンバーとしてエナジーを出そうと体を張って貢献することができた(武内選手)」
しかし試合最終盤には負傷者が相次ぎ、残る交代枠は20番・利川桐生選手ただ1人に。
後半38分、SH萩原周選手に代わりFW第3列が主戦場の1年生が加わると、ラグビー人生で初めてバックスラインに入った。
「最初は『え、まさか』という驚きもありました。でもグラウンドに入ったら、緊張することなく集中できた。やれることをやろう、とブレイクダウンで貢献することに意識を向けました。(利川選手)」
後半ロスタイムにはついに15人をピッチ上に揃えられなくなったが、98度目の明早戦を14人で凌ぎ切る。
2トライ2ゴール差で、勝利を手にした。
試合後、石田キャプテンは言った。
「たくさんの観客の中で明早戦ができたことが力になりました。ですが課題はたくさんあって、誰も喜んではいません。大学選手権に向け課題を見つめ直し、精進していきたいと思います。」
対抗戦2位として、大学選手権へは12月25日の準々決勝から登場する。