帝京大学
何度トライを取ろうとも。どれだけの点差をつけようとも。
全力で仲間のもとへ駆け寄り、全力で笑い、全力で次のプレーに向かう。
それが、帝京ラグビーだった。
シーズンを追うごとに、グラウンド上には笑顔が増えた。
そのわけをSH李錦寿選手(2年生)に問うと、一つではない理由が次々と挙がる。
仲が良いこと。
上級生に余裕があることで、下級生に余裕を持たせられること。
上級生たちのことを下級生が尊敬していること。
だからこそ下級生は、思い切りラグビーができること。
「それがプレーに表れているんだと思います。」
余裕と尊敬。
フィールドの外でも、その姿勢は示された。
4番・本橋拓馬選手(2年生)は、試合途中に交代しピッチを後にする際、カメラマン席の前を通ると「すいません」と声を掛け、駆け足で走り去る。
「カメラマンさんは写真を撮ってくれている。邪魔になったらいけないな、と思って。」
試合に関わるあらゆる人に対して、当たり前のように気を遣うことができるのだ。
試合後の挨拶では、負傷交代していた松山千大キャプテンをおんぶして整列した本橋選手。「僕と李錦寿でチヒロくんの肩を担ごうかと話をしていたんですけど、おんぶの方が早いじゃないか、と。キャプテンをおんぶできて良かったです」
今季最も印象的だったシーンがある。
準々決勝で同志社大学に勝利した後、ベンチに入ることのなかった多くのメンバーたちは、秩父宮ラグビー場の一角に集い、戦いを終えた選手たちを拍手で迎えた。
固く団結した姿から伝わる、帝京大学ラグビー部としての充実感。
だが、決して「Aチームの試合だからやったことではない」と李選手は話す。
「BチームやCチームなど、Aチーム以外の試合ではAチームが逆にそういう(迎える)立場になります。」
その時試合に出ていないメンバーは、帝京の代表として試合に出ている選手たちに敬意を表し、ワンチームとなる。それこそが、帝京が築き上げたカルチャーなのだ。
「僕も来年から上級生になります。そういう文化をしっかりと受け継いでいきたいと思います。」
対戦相手のSH宮尾昌典選手と談笑する姿も見受けられた。ともに兵庫県出身の同級生。高校からの付き合いゆえに「宮尾はいらんことしい」と仲の良さをうかがわせる
決勝戦に先発した15人のうち、2年生が4人を占めた。李選手・本橋選手ら現2年生にとっては、2連覇中の王者として迎える3年目の来シーズン。
「おごらず、また一からやり直しです。来年の今頃、シーズンが終わってみたら『3連覇してた』というようなチームを作っていきたいと思っています。1・2年生で優勝できた喜びを、上級生になっても味わいたい。そのためにチームの文化を引き継ぎながら、もっといい雰囲気にして優勝します。」
明るく、笑顔で未来を想像した。
2連覇を達成した4年生たち。涙し、安堵した表情を見せた