第2試合
茗溪学園×國學院久我山
第1試合とは打って変わって、ボールが行き来した第2試合。
茗溪学園にペナルティがかさむと、國學院久我山は冷静にペナルティゴールを選択する。
13番・長谷川裕太キャプテンが2つのPGを落ち着いて沈め、6点をリードした。
続く茗溪の反則ではラインアウトを選択。モールを組み、ゴールラインに迫るとFW戦で内に寄りながら1年生プロップの3番・笠井大志選手がトライを決めた。
國學院久我山が、前半を13点のリードで折り返す。
後半最初に魅せたのは茗溪学園だった。
ゴール目前まで攻め込まれるが、体を張ったディフェンスで守り切りペナルティを誘う。
自陣ゴール目の前でのペナルティに、タッチキックでエリアを稼ぐかと思われたが、そこは茗溪学園。タップキックからのクイックスタートを選択し、一気に外へ展開した。
だが、その外へ繋ぐパスでスローフォワードを取られてしまう。結果的に、自陣深くで相手ボールスクラムを与えることとなった。
だがそこでひるまなかった、茗溪学園。
國學院久我山がスクラムからボールを出し、数フェーズ重ねた先で飛び込んだのは茗溪学園11番・川﨑仁聖選手だった。
目の覚めるようなインターセプトを決め、およそ80m超の独走トライ。後半8分、チームに7点をもたらした。
僅か6点差。ワンプレーで逆転する点差に迫られたが、國學院久我山は自分たちのスタイルを失わなかった。
続くキックオフリスタートから一気に攻め立てれば、ラインアウトモールを2番・大西力選手が押し込みトライ。その2分後にはPGも決め、すぐさま16点差とした。
「落ち着こう、大丈夫だよ。」
リードする國學院久我山陣が、そう声を掛ける。
すると後半24分、茗溪学園が再び反撃に出た。相手の連続ペナルティで敵陣深くまで迫ると、ラインアウトからFW戦でゴール目前へ。
ラック横、ショートサイドを突いたのは17番・池田歩雅選手。難しい位置からのコンバージョンゴールも10番・岡本泰一選手が沈めると、14-23。9点差と迫った。
試合時間は残り2分半。
敵陣ゴール前でペナルティを獲得したのは、9点を追いかける茗溪学園だった。
PGの準備をしながらも、時間をレフリーに確認した茗溪学園13番・森尾大悟キャプテンは、ラインアウトを選択する。
「1トライ1コンバージョンゴール、そして1PGが必要な点差でした。最初はラインアウトの調子が良くなかったけど、後半にFWが修正して1つ前のラインアウトでは取り切れていた。だからもう一度、ラインアウトからトライを狙おうと思いました。」
だが、惜しくもそのラインアウトは繋がりきらず。
リードを守り切った國學院久我山が、見事全国選抜大会への出場権を獲得した。
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國學院久我山の土屋謙太郎監督は「僕は褒めるのが苦手」と前置きをした上で、この試合の評価を「6、7割」とした。
「ゲームの中で成長させてもらいました」といくばくか顔も綻ばせる。
新キャプテンは13番・長谷川裕太選手。昨年も主力メンバーとして花園に出場した長谷川選手を、新チームがスタートしておよそ1か月後に土屋監督が任命した。
「グラウンドで感じた悔しさ、そして全国レベルでのコンタクトレベルを知っている選手です。以前はあまり前に出て喋るような選手ではなかったのですが、新チームになってからは自ら情報発信する姿が見て取れるようになって。リーダーとしての成長に期待も込めて、キャプテンに指名しました。」
そんな長谷川キャプテンは試合を振り返ると「前半、風下でも13-0とリードして折り返せたことは大きかった。常に自分たちがスコアで上回っていたので、トライを取られても落ち着いてプレーすることができた」と話す。
元々定評のあったゲームメイク力。冷静に試合を分析した。
ここ数年、関東で勝てない年が続いた國學院久我山。
「勝ってベスト4は久しぶり。茗溪学園さんも強かったので、いい勉強をさせてもらい有難かったなと思います」と土屋監督が話せば、長谷川キャプテンも「(準決勝の相手は)個々が強い桐蔭。1対1で負けないように、1週間しっかりと体を当てる練習をしたい」と次戦を見据えた。
盛り上げ役の多い今年のチーム。試合が終わった後にも、肩を寄せ合いながらベンチに戻る姿が印象的だった。
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一方敗れた茗溪学園は、長年監督を務めた髙橋健氏が今年度限りで退任。部長職に専念し、後任には茗溪学園中学での実績も豊富な芥川俊英氏が就くことになった。
「フェーズアタックを充実させていくこと、そしてセットプレーの安定。まずは弱点であるブレイクダウンとセットプレーに注力していきたいと思います。」
生徒とともにボールを持つ指導スタイルゆえ、芥川監督初めての関東新人大会での指揮は松葉杖姿だった。
「今日の負けは悔しいですが、せっかく頂いた機会。1週間でしっかりと修正して、全国選抜を懸けて次戦・昌平戦、頑張りたいと思います。(芥川監督)」
新チームでキャプテンを務めるのは、セブンズユースにも選ばれている逸材・森尾大悟選手。
主将に任命された時には「嬉しさよりも責任感、重圧の方が大きかった」と素直に口にした。
自身の持ち味はラン。ボールを持ったらその全てをトライに繋げる気持ちでプレーしているというが、それでもまだ全ての試合でチームを勝利に導けるような選手にはなれていない、と評する。
「だからこそ、プレーで鼓舞して声でも鼓舞したい。このグラウンドで一番声を出す、一番存在感のある選手でありたいと思います。」
夢は、セブンズと15人制の両方でのジャパン入り。
心強いトライゲッターが、声でもチームの道しるべとなる。