試合概要
令和5年度 第71回関東高等学校ラグビーフットボール大会 埼玉県予選
【準々決勝】
本庄第一高等学校×慶應義塾大学志木高等学校
【日時】
2023年4月29日(土)13:00キックオフ
【場所】
伊奈学園グラウンド
試合結果
どこまでもフォワードで。何をしても、しなくても、『オプション:フォワード』。
「もう、今日はフォワードです。」
慶應志木・竹井章監督も、佐藤龍吾キャプテンも、口を揃えた。
「先週までと違って、今日は考えさせずにフォワード。(竹井監督)」
真っ向勝負を挑んだ。
先制トライは慶應志木。
ゴール前に到達すると、FWが何度も何回も当たる。あと数センチでゴール真下にトライ、という所から一つボールを放れば、受け取った13番がそのまま真っすぐ飛び込んだ。
7点を先制する。
本庄第一も黙ってはいない。すぐさまバックスが外を抜け、10番がトライ。
しかしこれはグラウンド右端。コンバージョンゴールは成功せず、5点に留まった。
次なるチャンスを手にしたのは、慶應志木だった。
キックチャージで敵陣深くに入ると、ブレイクダウンでペナルティを獲得する。5mラインアウトモールで仕掛けたが、崩れフォワード戦へ。
いくつか体を当てると、寄った相手のギャップを突きNo.8佐藤キャプテンがラックサイドに飛び込んだ。
5-14、慶應志木が9点のリードで前半を折り返す。
風上に立った後半、盛り返したい本庄第一はしかしキックオフボールがダイレクトタッチに。
外までボールを運びきり、好機と思われた時にはスローフォワードの判定を受けた。
モメンタムを得たい時に、あと一つがかみ合わない。
そんなもどかしさを払拭したのは、やはりキャプテンだった。
敵陣でペナルティを獲得すると、クイックスタートを切ったのは9番・杉田キャプテン。本庄第一らしいバックスの連携が繋がれば、最後は10番が仕留めた。
12-14、2点差へと迫る。
「こっから盛り上げよう!あげよーぜ、みんな!」と声を出したのは本庄第一の右ウイング。キックオフレシーブからのロングタッチで、会場全体が盛り上がった。
すると続く攻撃から敵陣5m、左15m付近で本庄第一がペナルティを獲得すると、選択したのはスクラム。用意してきたアタックプランを、狙った。
ここでは攻めきれずターンオーバーを許したが、続く敵陣22m付近ゴール斜め前あたりで再びペナルティを奪い取った。
ペナルティゴールでまずは逆転か、と思いきや勝負に出た本庄第一。トライを狙い、ラインアウトを選択する。
しかしここでも取り切れず。3点を捨てたチャレンジは、叶わなかった。
慶應志木が2点をリードしたまま迎えた、後半最終盤。
最初にチャンスを手にしたのは慶應志木だった。ゴリゴリと何度も何度も繰り返しFWを当てると、最後はやっぱり頼れる主将・佐藤龍吾キャプテンがボールをインゴールラインの向こうに押し付ける。
ゴールも成功し、12-21。慶應志木が9点のリードを手にした。
残り僅かな時間となったが、最後まで諦めなかった本庄第一。ラストチャンスから攻め込むと、敵陣深くで何度かペナルティを手にすれば与えられた認定トライ。
すぐさまもう一度、キックオフからチャンスをと全員が急いで振り返ったが、しかしここで長い笛が吹かれノーサイド。
19-21。新人戦6位の慶應志木が、3位の本庄第一を破り、第64回大会以来となる7年ぶりの関東大会出場を決めた。
そして何よりも大きな、秋の花園予選でAシードを獲得した。
ジャージだけでなく、顔も体も誰よりも人一倍泥だらけになったのが、慶應志木のNo.8佐藤龍吾キャプテンだ。
フォワードのチームにおけるフォワードのキャプテンとして、誰よりも体を張らなければいけないことを最も深く理解しているのが佐藤キャプテンであろう。
果たしてこの日は何度ボールを持ち、前に出続けたか。自身が挙げた2トライだけでなく、すべてのトライに絡む活躍を見せた。
誰よりもタイガージャージが似合う奮闘ぶりだった。
チームには好材料もあった。ゲームウィークの月曜日、2代上のキャプテン、現慶應義塾大学2年生・石垣慎之介選手が学校を訪れる。同じ宇都宮ラグビースクールの後輩で、同じような期待を受け1年生ながら先発を務める後輩、浅野優心選手(スタンドオフ)を見舞った。
「同じように新幹線通学していたことや、大変な毎日だけど楽しいから、って話をしてくれたんです。緊張してもしょうがない、1年生だからミスをしても大丈夫。フォワードがどうにかしてくれる、という一言で、浅野もリラックスしたようです。本当に助かりました、石垣が来てくれて。(竹井監督)」
チーム慶應志木として、戦っていく。
「いつも通り展開ラグビーをしよう、と。そして慶應志木さんの得意なモールをどう止めるか、と対策をしてきました。それを今日は60分間、やり通せなかった。ムラがあったな、と思います。」
本庄第一の新井昭夫監督は振り返った。
埼玉1位の座を狙って挑んだ今大会。
グラウンド広くボールを動かせば、面白いラグビーはもちろん通用した。
だが、ここ一番でのミスも同時にあった。
まだ、夏前。できること、やりたいことを試す時間はまだまだたくさんある。