ミスしても構わない。だから、全員で励まし合って。國學院栃木が流した涙は「勝ちたかった」から|第71回関東高等学校ラグビーフットボール大会

今年で30回目の関東大会出場となった國學院大學栃木高等学校。

初戦の相手は、昨年と同じく流通経済大学付属柏高等学校だった。

1年前は試合終了際に逆転負けを喫した相手。再び、負けるわけにはいかなかった。

だが、気負いからか思うようにゲームを運べない。

「試合の入りが悪かった。チームの雰囲気もどんどん悪くなってしまった」と、9番・小倉光希矢キャプテンは振り返る。

前半7分、13番・西本壮選手のペナルティゴールで3点を先制すると、その4分後には逆転となるファーストトライを許し、4点のビハインドで前半を折り返した。

転機はハーフタイムに訪れる。

チーム全体の雰囲気が悪くなり、どうしても互いのミスを責め合ってしまった選手たち。

だから、主将として。小倉キャプテンは、声を発した。

「ミスはしても構わない。勝てばいい。だから、全員で励まし合って残り時間を戦おう。」

チームとして大切にすべきことを、もう一度確認した。


「ハーフタイムで、みんなを同じ方向にキャプテンとして持っていけたことが良かったのかな、と思います。」

するとその言葉でチームは立ち直った。

昨年から継承する堅いディフェンスで試合を組み立てると、後半13分、12番・福田正武選手のトライでついに逆転する。

残り時間10分で、3点のリードを奪った。

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もちろん流経大柏も諦めない。猛攻を仕掛けられると、がっしり受け止めるタックルが続く。

残り時間数分となった頃には、自陣5mまで攻め込まれていた。

トライを目指す流経大柏は、ここでラインアウトからモールを狙う。

逆転を許したら、一気に形勢が傾く場面。だから國學院栃木は『モールを組まない』という選択に出た。

流経大柏のジャンパーが下りた瞬間、國學院栃木のFWたちは、一歩引いた。

すると意表を突かれた流経大柏は、勢いよく前進してしまい反則。フライングウェッジが取られ、レフリーの手が國學院栃木側に高く上がった。

実は、その布石となるプレーが前半にあった。

「前半、ラインアウトDFでサックを狙ったら、失敗して相手にインゴールまで持ち込まれてしまった。だから今度は『入らない』。同じことをしない、という選択に選手たちの成長を感じました。(吉岡肇監督)」

手を変え品を変え、同じ轍は踏まない。

敵将・相亮太監督も「あの時間、あの場所で國栃さんの勇気あるプレー。讃えられるべきです」と賛辞を贈った。

最後、ペナルティからタッチキックを蹴るは、2年生スタンドオフの神尾樹凛選手。

SH小倉キャプテンはそっと近づき、声を掛けた。

「タッチに出せば、必ず勝てる。落ち着いて大丈夫だから。」

ひとつ深呼吸をしてから、ボールを蹴り出した神尾選手。エリアを挽回しピンチを脱すると、その数プレー後にノーサイドの笛は吹かれた。

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試合後、吉岡肇監督は言った。

「伝統の一戦だったな、って。コクトチ、リュウケイ。関東両雄の激突は本当に分からない。始まってみなきゃ分からないし、終わってみなきゃ分からないですね。」

だって10試合戦ったら、何勝何敗になるか分からないくらい毎年力の差が拮抗しますから。3点差だろうが何だろうが、勝って凌いで良かったです。

そう言葉を続けると、選手たちを見やった。

「お互いの選手を讃えたい。本当にナイスゲームでした。去年は2点差で負け、今年は3点差で勝ち。ライバルってこのことだな、と。」

試合後、観客席への挨拶を終えると、ともにスクラムハーフを務める両チームのキャプテンは、どちらからともなくそっと手をあわせた。

U16関東ブロックのセレクションで顔を合わたことをきっかけに、1年生の頃からの友人でありライバル。

そして、今では互いに高校日本代表候補。

「グラウンド内では絶対に負けたくないな、って。(小倉キャプテン)」

流経大柏・三田村喜斗キャプテンからは「次の試合、頑張って」と託された。

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