2年続けてのカードとなった、関東高等学校ラグビーフットボール大会Aブロック1回戦。
千葉県1位の流通経済大学付属柏高等学校は、栃木県1位・國學院大學栃木高等学校と対戦した。
流経大柏にとっては、昨年逆転勝ちを収めた相手。
今年も同じく、僅かな差を追いかける展開に1年前の記憶がよぎった。
試合を分けたのは、1つのプレー。試合終盤のラインアウトだった。
敵陣深くでマイボールラインアウトのチャンスを得た流経大柏は、危なげなくボールを獲得すると、モールを組む体制へと移る。
しかし相手はコンテストせず。モールが組まれないまま、ラインアウトは解消した。
思わず勢いよく前進してしまうと、吹かれた笛は流経大柏の反則。フライングウェッジを取られた。
「怖くてやりにくいことを、國學院栃木の選手は選択した。だから栃木は褒められるべき。うちは、それを想定していなかった。」
試合後、「あれが全てだった」と話したのは相亮太監督。
「あれが全国トップ4の実力です。」
ラグビー人として、相手を讃えた。
2月に行われた関東新人大会では、チームが始動して間もなくだったこともあり、未完成なプレーも多かった。
あれから4か月。強度は格段に上がり、意志の感じられるラグビーへと進化した姿に、日々の練習量を想像する。
「Aブロックらしく、見ていて面白い内容じゃないと関東が笑われちゃうから。」
今年は茗溪も強いし、栃木も強い。そして桐蔭がリードしてくれている。うちもなんとか頑張って、追いつけるように頑張りたい。
相監督は、そっと呟いた。
この日、ひと際力強い走りを見せたプレイヤーがいる。
13番・阿部煌生選手。
1年次から花園に出場していたエースは、自身の役割を「ランでゲインメーターを稼ぐこと」と認識して挑んだ。
「ピッチにいる30人の中で、誰にも負けない。とにかく練習から、そう意識しています。」
強さの源は、ピッチサイドから聞こえた多くの仲間の応援歌。
「本当に。応援してもらえると、頑張れます。」
勝ちたい、という気持ちも大きくなった。
「僕たちはチャレンジャー。だから自分たちのやることを徹底しよう、と試合に挑みました。」
そう話したのは、SH三田村喜斗キャプテン。
相手スクラムハーフからのコンテストキックに対し、チームとして準備はしていた。
だがそれでもミスは起き、相手ペースになってしまったことを悔やんだ。
関東大会に参加するにあたり、相監督が選手に求めたことがある。
自分たちは、何を手に入れたいのか。
「夏、全勝して帰ってくるためには、今日何を得るのかということが大事でした。(相監督)」
狙いの半分は手にすることが出来た。だが「残りの半分、大きな課題を最後の最後にもらった感じがします」と総括する。
強くなりますね、と相監督へ伝えると、強くなれますね、と返した。
三田村キャプテンは静かに誓った。
「夏、日本で一番キツいことをして、日本一に向かっていきます。」