東福岡
東福岡が掲げた対桐蔭学園戦のテーマはただ一つ。
『勝利』であった。
「選抜大会で負けてから、この日がターゲットでした」とは隅田誠太郎選手。全国7人制大会直前に負った怪我が響き、今合宿中はプレーできないが、リーダー陣の一員として参加している。
試合中はタッチジャッジなど運営補助にあたっている
春、19-34で敗れた相手に、この日はスピードアタックでボールを動かした。
横だけではなく、縦にもアグレッシブに。キックを交えた立体的なアタックで、前半は勢いに乗った。
「昨年は両ウイングのフィジカルを頼りに、外に振ってから縦にゲインしていました。だけど今年は、スピードのラグビー。どうやって縦に使うか、どうやって相手を寄せていくか。自分たちがやろうとしていることが、少しは垣間見えたな、と思います。」
そう話すは、SH利守晴選手。スピードアタックの肝を担うポジションである。
試合展開自体は、前回対戦した全国選抜大会と同じような流れだった。
前半東福岡が勢いを持って連続トライを決めたが、後半桐蔭学園が要所で決めきる。
だが、その内容は異なった。
「選抜では僕たちが前後半同じプランで臨み、相手に対応されてしまいました。だけど今日は、後半やりたいことを色々と変えながらチャレンジして、その中でのミスで失点したんです。展開的には前回と同じように映るかもしれませんが、やっていることは違っていた。そこでの違いは出せたんじゃないかな、と思います。(利守選手)」
東福岡が掲げた夏の目標が4つある。
ハードディフェンス、スピードアタック。ミスを減らすこと、そしてFW強化だ。
「ハーフ団としては、スピードアタックにこだわりたい。ヒガシのラグビーは、横にも縦にもアグレッシブ。見る人を魅了するラグビーです。そのための大前提として、ミスをしないこと。そこが僕は一番大事だと思っています。(利守選手)」
ミスをしない桐蔭学園のラグビーに、ミスの少なさで対抗したかった。
「藤田監督にいつも言われているのは『ミスをしないことが一番の戦術である』ということ。これからの4か月間で完璧に近づけるためにも、菅平での残り2戦で自分たちが何を見出せるか、が大事になるのではと感じています。」
この試合、振り返るべきポイントがある。
11点差が開いたタイミングで、ペナルティゴールを狙えるシチュエーションが2度ほどあった。
もしそこで2度とも沈めていたら、6点を追加し2点差で勝てていたかもしれない。
だが、11点差とは判断が難しいシチュエーションなのだという。
「11点差の時に1つのPGを決めても、8点差にしかなりません。8点差を逆転するには、必ず3アクション以上が必要になります。トライ、コンバージョンゴール、プラスもう1得点。」
自分たち15人と相手15人、そして試合の流れを踏まえてどの選択をするのか。
試合は生き物ゆえ、実践で経験値を積む。
「このレベルでの3点の使い方はめちゃくちゃ大事なんだな、って今日改めて思いました。」
ラグビーIQの高さを仲間からも認められている利守選手だからこそ、責任感溢れる言葉は続いた。
グラウンドの外から戦況を見守った隅田選手は言った。
「選抜の時よりも、みんな手応えを感じたと思います。ただ、ピースがまだ噛み合っていない状態。それでもこの合宿を通して、一歩手前くらいまでは築けてきたかなって。あと4か月で完全体になるよう、僕も早く復帰してチームの役に立ちたいです。」
トライ&エラーを繰り返せば、その分チームとしての厚みを増した強さが生まれるはずだ。